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出会い
3か月近く前の、まだまだ世間ではお正月モードの頃。
年始に引き続き成人式用にと、ネイルのお客様が増えてヘトヘトになっていた頃だった。
予約と予約の合間の休憩時間に、いつものようにサロンの近くの公園でお昼ご飯を食べる。
コンビニで購入したおにぎり、サラダチキン、アントシアニン豊富な野菜ジュース。
静かな公園。
寒い中公園で寛ぐような人はそういない。
時々お散歩のお婆ちゃんに声をかけられる。
換気も充分にしてはいるけど、サロンの独特なにおいから自分を解放するために、私は必ず外で休憩をとるようにしている。
流石に真夏の公園での昼食は、私自身が干からびてしまうので近くのコーヒーショップへ足を延ばすけど、頻繁に行くと今度はお財布の方が干からびそうになる。
目も、休ませたい。
この緑豊かな公園で出来るだけ遠くを見るようにしている。
クスノキだろうか、この冬でも葉っぱが残っている。
「さて、と。そろそろ時間だな」
ベンチの自分の横に置いた昼食のゴミを手に取ろうとした時、急に誰かが私の手を取った。
「綺麗な爪ですね」
いつの間にかゴミの向こう側に、ひとりの男性が座っていた。
「凄い、まるで夜空のようだ」
私の手の爪をじっと見つめ、感動する男性。
今の私のネイルのコンセプトは「冬の海に映る夜空」。
グラデーションと透明感にこだわった、なかなかの力作。
「あ、ありがとうございます。私、そこのネイルサロンに勤めているんです」
「え、これご自分でされたんですか?」
男性が驚き、私の爪から私の顔へと視線を移す。
うそ、な、なにこのイケメン!
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