ハサミ

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ハサミ

「帰らないの?」  ……?違和感を感じた。デジャヴ、というやつ。既視感、というやつ。やけに気持ちが悪い。 「帰るけどちょっとまって」  なぜか帰りたく無くなった。違和感のせい?口が勝手に帰りたくないことを伝えてしまった。友達は不機嫌になった、ごめん。機嫌を直してもらう方法……そうだ。 「公園、寄らない?」 「うーん…」  迷っているらしい、それも当然だ。私たちは送ってもらって今朝学校に来た。寄り道をするということはお迎えを呼ぶ場所も変わってくるし、簡単にお迎えを呼べなくなる。 「やっぱ…」  やめておこっか。そう言おうとしたとき。勢いよく私のリュックのチャックを開けた。そして中を漁り始めた。俯いていて、無駄に整えられた前髪のせいで顔は見えなくて、ずっと無言で。異様な雰囲気に声も出せずにいると、お目当てのもの…私の筆箱が出てきた。 「ねぇ、なにして…」  その中からハサミを取り出すと、やっと顔を上げてくれた。あぁやっぱり整っているなぁ。  …見えなかった。見とれている場合じゃなかった。そうかこの子こんなに早く動けたんだ。 「ごめんね、今回は長いかもな…」  そんな悲しい声で謝るくらいなら、なんでこんなことするの…。あぁもう感覚がない…。また来た、デジャヴ。明らかに初めての体験であるはずなのに、こんなところでも感じるだなんて、どうかし
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