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「帰らないの」  あぁ〜そうだね 「帰るよ、行こう」 「…うん」  大丈夫、きっと…。あぁ………。 「ねぇ?」  え、 「なに?」 「私歩いて帰るよ。」  はぁ…。 「なーに言ってんの?1人で歩いて帰るつもり?」 「そんなつもりはないけど…」  えぇ?それってつまり 「私に歩けって言うの?」 「うん」  はにかんだ目の前の美少女はやけに美しい、たぶん幸せを感じているからだろう。何も、わからないけれど。 「そうだ、公園に寄ろうよ」  公園?どうして急に……いや急にじゃない、だって私も公園のこと考えてた。奇跡なんかじゃない、この子と一緒にいて感じる違和感は全て必然であるはずなのだから。なんでかは……わかんない。神様がそう言ってたんだよきっと。 「いいよ、今日は塾もないし」  この子も今日は暇なはず。だって遊びに行くなんて聞いてないし、私以外の子と遊んでるところなんて滅多に見ない。学校では人を差別せずに誰とでも関われるいい子らしいけど、この子は私以外に興味がないのか?って疑うくらい私にいつもべったり。 「知ってる〜〜ほら行こ」  もしかして私のこと…… 「トラックに気をつけてね」 「はは、もちろん」  玄関を出た瞬間、校門の前の道路をすごいスピードでトラックが通って行った。ほら、必然を見つけた。  この子の隣にいると、こういうことはよくある。本当に人間なのかなって思うけど「霊感が強い」とかいう謎の能力のせいにされている。納得する私が悪いのかも。 「ついたー!私ブランコ乗りたい」  はしゃいでる、かわいい。表情はいつも通りの笑顔になっている。いつも通り?そう、いつも通り。でもこの言い方はまるで、いつも通りじゃない時があったみたいな……そんなことないのに。さっきから私は自分の思考にずっと反対している、どうしたんだろう…暑さにやられちゃったのかな。 「水筒空っぽだったよね?入れてあげる」  …何で知ってんだよ、怖いなぁ。じゃあ水筒を取り出して、入れてもらってる間にトイ… 「トイレに行きたいんでしょ、行ってきな?その間に私水筒に入れといてあげる」 「ありがと、行ってくる」  かなりの恐怖を感じたけど、もう慣れてしまった。きっとあの子は人のことをよく観察できて、私が顔に出てるか行動に移しているのか…それを見られているだけ、きっと。 「ただいま」 「おかえり〜ブランコあいたよ、小学生どっか行った」 「じゃあ乗る?」 「もちろんすぎ」  お前こっちね、と自分は左に乗る。スカートを整えながら座るのは女子学生の癖だと思う、個人的に。 「はいお水」 「ありがと」 「飲んで、暑いから」 「え」 「心配、熱中症」 「親かよ」 「どっちかと言えばたくさんの命を預かってる教師の方がよく水飲めっていうよね」 「あ〜わかる」  喉を鳴らしながらお水を飲んでしまう、水筒を空っぽにするくらい今日は暑かったのだから、喉乾いてたんだろうな。気づかないことってあるんだ、やっぱり怖い、水分補給は大事。 「私さ、悩み事あって」  水筒の蓋を閉めていると、思いもよらない言葉が出てきた。 「そっか、聞くよ?」  やっぱり悩み事あったんだ…思いもよらない言葉だったはずなのに謎に納得してしまった。 「なんかおかしいんだよね〜」 「なにが…」  そう答えながら、さっきの水に違和感を感じた。なんかへんな味、水道水だから?えっ何それ怖い。 「好きな人できたかも…」 「えっおめでと」  どうでもいい〜というよりんなわけね〜が勝った。だってこの人私以外と関わらない……え?あぁそういう…やっぱり?察しのいい女でごめん。 「それがさ、なんか変なの」  もう一口水を飲んだ、頷きながら。やっぱり変な味がする気がする。 「その人の全てを私のものにしたい…みたいな」  むせてしまった、変なこと言うから。 「特殊性癖?」 「かも〜…んふ」  顔だけは良い。いや声とか身長とか…色々理想の女の子かもしれないけど、やっぱり性格が残念だよな。笑顔が私は一番好きだけど。 「だから…ごめんね、何回も何回も」 「なにが?」 「その人を殺してみれば…なんかわかるかなって……」 「え?やったの??」  嘘でしょ、と笑ってしまう。本当だったとしても笑うしかない。 「やったよ……引いた?」 「うん」 「即答かよ〜」  ため息をつきながら、私の手から水筒を奪う。 「しかも何回も殺してるんだよね」 「え?何人も好きになった?もしかして」 「まぁそういうことにしといてくれ」 「何それ怖すぎ」 「でももう最後にする」 「あぁ今から……ゴホッごほっ……ごめん、むせた」  そう、むせた。喉が痛いわけでもないのに。 「だいじょ 「げほっげほっ……ゴホッ…」  思わず口に手を当てる。肩を揺らしながらヒューヒューと呼吸する。おかしい。いやおかしくない、やっぱりこうなる…やっぱりって、なに…もう怖いよ………なにも、わからない。 「ごめんね、大丈夫。私もすぐ行くからさ」 「なにが、大丈夫…なの……」 「たしかに…好きな人をたくさんぐちゃぐちゃにして、私は大丈夫じゃないかも」  あぁ、きっとこの子は………おかしい人間じゃない、人間なんかじゃない。人間なんて醜いものよりずっと可愛くて美しい天使かなにかかもしれない。 「でもあんなにたくさん私に殺されたけど、私のこと好きでしょ?」  はは、もちろん 「大好きだよ
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