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さっき空を見たときはイライラするほど青かったのに、いつのまにか真っ白になっている。そう考えればあれから数時間経った。目の前のことで精一杯だった、窓の外を見る余裕なんてなかった。太陽が隠れてくれたというのに、まだ暑い。冷房はついていない、公共の場はめんどくさい。
「帰らないの?」
あぁ、そっか。帰ろうとしていたんだった。
「ごめん、もう帰るよ」
「一緒に行こ」
なぜかぼーっとしてしまう。きっと暑さに頭をやられたんだ。今日はほぼずーっと自習で疲れたのも関係してるかなぁ。授業を聞いてるいるより勉強したと感じるのは笑えるけれど、横に立っている友達の表情は笑えないほど辛そうだった。なにか、あったの?話なら聞ける…簡単な言葉で、少し口を動かして声を出せばいいだけなのに。そんな簡単なことができないんだ、最近。なんでだろう。
「はぁ、はいあんたの番」
「ん」
友達が立っていた場所を退いてくれる、お財布をリュックに入れながら。あー、そうだな………なぜか気分が乗らないな。天気のせい?世界のせいだよね。
「私今日歩いて帰る」
手をかけていた公衆電話の受話器を離して、テレフォンカードをポケットにしまう。
「え、ガチで?こんな暑いのに??馬鹿になったか、ついに」
「そうかも〜」
ふふ、とお上品な声が隣で鳴る。そして玄関で靴を変えている今になって後悔し始める。流石に馬鹿だったかもしれない、だってこんなにリュックは重いし、外は暑い。
「怖気付いたか」
…顔に出てたみたいだ。でも謎の負けず嫌いが出てしまう。絶対歩いて帰るから、と口に出してしまった。友達の悩みは聞けないのに。
「まぁせいぜい頑張れよ、じゃあね」
お母さん、車飛ばしたのかな。そう思ったけど、彼女は走って行ってしまって、私は手を振ることしかできなかった。こんなにお迎えが早く着くなんて、こんなに早くひとりになるなんて。まぁいいや、帰ろう。今日は帰ったらゲームをしよう、今週分の課題を終わらせたから少しは遊べる。そうだ、あとでDMでも送ればい
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