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僕はどこで間違いを犯したのだろう。僕はなぜみんなに嫌われているのだろう。僕はこれからどう生きていけばいいのだろう。
高校1年4月。新しく始まる生活に僕は心を弾ませていた。新しいHRに入るともういくつかのグループができていた。僕も友達を作るため、近くの男子グループに話しかけてみた。
それから何ヶ月か過ぎて、僕は毎日学校に行くことをやめた。留年しない程度に学校に行くことにした。 入学式に話しかけた男子たちと仲良くしていたのだが、日が過ぎることに彼らは僕を使いまわしにしていた。彼らがあのことを僕に言ってきた頃だろうか。僕は不登校気味になってしまった。両親には心配をかけないように留年ギリギリのラインを狙って生活していた。1学期の成績はなんとか大丈夫だった。
今日は憂鬱だ。今日は学校に行かないといけない日だった。僕はいやいや下駄箱を開けるとゴミが詰まっていた。2学期に入った頃からクラスメートは僕をいじめるようになった。理由は知らない。理由を知っていたらこんな苦しい思いをしないで済むのに。僕はもう発狂寸前だった。けれど下駄箱に入っていた、ガラクタの中に隠されていたある1通の手紙が僕の目に止まった。僕は手紙の封を開けた。
「Dear.いじめられている君へ」
その手紙はそんな言葉で始まっていた。
Dear.いじめられている君へ
突然の手紙、失礼します。私はいつも君がひどいことをされている現場を目撃している人です。しかし私にはそれを先生に報告しても何も動いてくれません。きっと先生たちは見て見ぬふりをしているのでしょう。私にできることはもうこれ以上ない。そのときに思いついたのはこのように手紙を書くことでした。この手紙は誰にも見られないように、私と君しか読めないように放課後誰もいないタイミングでこっそり君のロッカーに手紙を入れています。そんな話はさておき、これからもいじめに屈しないで頑張ってください。
その手紙の差出人の名前は全く書いていなかった。けれどなぜだろう。僕はその手紙に元気づけられた気がする。その反面少し怒りも感じている。少し無責任な気がする。もっと僕を助ける努力をしてほしい。しかし今の抱いているこの気持ちは僕をいじめている奴らと同じ傲慢ではないだろうか。僕は謙虚に生きよう、あいつらと同じようにはならないって誓っただろう。自分で自分を落ち着かせて手紙をカバンに入れた。
教室に入ると机には数々の罵詈雑言が書かれていた。なかにはあのことを彷彿させる言葉もあった。僕は雑巾を取り出して落書きを消していった。こんなことに時間を費やしたくもないが今日学校に行かないと留年してしまう可能性が高くなるため頑張って学校に来た。学校に来ると待ち構えているのは地獄だった。しかしそれも慣れた。
「ねえ、君。大丈夫?」
雑巾を絞っていた時、誰かが話しかけてきた。僕に話しかけてくる人なんているのかと思って後ろを振り返ると見たことがない女子が立っていた。
「私は、君のお隣のクラスの如月。君は噂のいじめられっ子だよね。」
「・・・ああ。」
僕はどこかで聞いたことがある名前の少女の言葉に仕方なく肯定する。
「あ、意外とすんなり認めるんだ。」
「そりゃ、嘘ついてもばれるから。」
「確かにそうかもね。」
如月は納得した顔で僕の顔を見た。
「君、逃げないの。」
「逃げられるならとうの昔に逃げているさ。僕は親に心配されたくないから逃げられないのさ。」
僕はその場から立ち去った。
今日は久しぶりに彼に話した。彼は変わっしまった。彼は死にかけている顔をしていた。家も近いから今日こっそり彼についていったが彼の足並みは映画で見るゾンビのような足並みだった。私のことを覚えていないようで少しショックだった。私、如月と彼は昔よく遊んだ仲だ。いわゆる幼馴染というものなのかもしれないが、私たちが6歳の時親の都合で離れ離れになってから関わりが途絶えてしまったが高校で奇跡的に再会した。いや、向こうは気づいていないから再開とは言えないかもしれない。彼の名前を聞いたのは隣のクラスの悪い噂だった。まさか彼がいじめられているなんて思ってもいなかった。
「でも、今はそんな場合じゃないよね・・・。」
その言葉は誰もいない部屋に消えていった。
今日は1日中家に引きこもっている予定だ。暗い部屋でネトゲをするのが僕の生きがいだ。 今やっているゲームはバトルロイヤルゲームで、僕の順位は23位。今日はまあまあ調子がいい。こんなにゲームをやって親に怒られないのかと思っている人もいるだろう。僕の親は毎朝早朝に通勤するためそうそう顔を合わせることもない。それに無理矢理学校に行かせることはしない親なのだ。いい意味でも悪い意味でも放任主義の親なのだ。そのため僕は集中してゲームをすることができるのだ。
「こんな暗いと視力爆下がるよ。」
その声のあと部屋の電気が着いた。
「うん。」
その時気づいた。その声は母でも父でもない。では誰だろう。後ろを振り返ると如月がいた。
「如月。」
僕は叫ぶようにその子の名前を呼んだ。
「そんなに焦ってどうしたの。」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや・・・・・。」
僕の部屋に女子がいる。しかも勝手に入ってきた。僕の頭が少し落ち着いてきた頃1つの質問をした。
「どうして如月がここにいる。」
「おばさんに頼んで。」
「なんで僕の母と仲良いいの?」
「私のこと、覚えていない?」
「えっ。」
確かにどこかで会ったことがある気がする。しかしはっきり思い出すことはできない。
「ほら小さいことたくさん遊んだじゃん。」
「・・・。あっ。もしかして如月美緒。」
「そうそう。私、美緒だよ。」
「あの。」
「そうそう。」
「・・・。」
僕はノスタルジアを感じていた。
「おばさんに君の事心配だから少し話してもいいか聞いたら快く承諾してくれた。」
「そうか・・・。」
美緒はクッションの上に座った。
「・・・、君はこのままでいいの。」
「いいわけないだろう。」
「そうだよね。じゃあさ。」
「無理だ。あいつらに歯向かう精神力も、勇気も、度胸もない。」
「全部同じような言葉だよ。」
「ともかく無理だ。」
「やる前に諦めてたら何もできないよ。『為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり』って知ってる?」
「へえ、その格言にそんな続きがあったんだな。」
「感心する所そこじゃない。勇気を振り絞って動き出さなきゃ。」
「・・・。話が終わったのなら帰ってくれ。」
「・・・。もう、また来るね。」
「もう来るな。」
美緒は僕の部屋のドアを勢いよく閉めて帰った。
Dear.いじめられている君へ
調子はどうですか。きっとあまり優れていないと思います。仕方ないの一言で片付けられる問題ではないこともわかります。私はどうにか君を助けられる人がいないか探しています。校長にも教頭にも相談したのですが取り合ってくれませんでした。警察も証拠がないと動かないと言われました。どうすればあなたを助けられるでしょうか。
今日2通目の手紙が入っていた。この手紙は美緒が書いたものではないと僕は考えている。というのもこの手紙を書いている人は僕のクラスメイトだ。それは1通目の手紙で確認済みだ。しかし誰かは全く見当がつかない。でも、この人が僕のために動いているのは嬉しい。僕は手紙をカバンに入れて教室に向かった。
今日、人生で初めてお金をせびられた。放課後体育館の裏に呼ばれた。本当は行きたくなかったのだが、行かないとボコボコにされるので行ってみると結局ボコボコにされた上、金まで取られた。
「お前みたいなゴミなんて死んじまえ。」
リンチに会っているときに言われた言葉が今も頭にこびりついている。あの時言われた言葉そのままだった。僕はその後一言も喋れなかった。胃もキリキリしてきた。あのときを思い出すとでパニック症状が出てきてしまう。苦しい思い飲み込んで僕は自室に向かった。
君が中学生の頃だったかな。私はその時もただ見ていた。君は死にかけていた猫を拾った。その直後、学校で感染症が広まった。 それで君が拾った猫が病原体を移したという噂が広まった。でも調べると、その猫は迷い猫で君はすぐに持ち主に送った。つまりその噂は嘘だった。けれど学校の人はそれを真実だと思い間違えた。そこから君はいじめられるようになった。君は遠くの高校を受験して通うことになった。けれど、誰かがその噂を聞いてまた君はいじめられるようになった。私は何をしていたのだろう・・・。けれど私にはどうしようもない・・・。
今日は高梨さんの家にお伺いする日だ。高梨さんは僕が中学生の頃拾った迷い猫の飼い主さんだ。たまにその猫、クワの様子を見に行くのだ。クワは目が赤色と緑色のオッドアイで毛の色は茶色。種類はなんだったか・・・。高梨さんの家に入るとクワが近づいてきた。あの事件からクワは唯一の心の支えだ。いや最近、手紙と美緒のおかげで少し楽しいかもしれない。でもやっぱり、一番の支えはクワだ。僕がソファーに腰を掛けると決まって僕の膝の上に座ってくる。そしてクワをなでるのがルーティンだ。
「にゃ〜。」
クワがルビーとエメラルドの両方を豪華に入れた目でこちらをじっと覗いてくる。この合図はきっと遊んでほしい合図なのだろう。僕は立ち上がって猫じゃらしを取りに行き適当に振ってやる。するとクワはそれを追いかける。しばらくしてクワが飽きると僕は再びソファーに向かう。
「にゃにゃ。」
その鳴き方は初めて聞くものだった。クワは僕に何かを伝えたがっているが僕には猫の言葉は通じない。
「ごめんな、クワ。僕はお前に言っている言葉はわからないんだ。」
クワは不屈そうな顔をし外に出た。
家に帰ると「ただいま」という声が返ってきた。という妄想をいつもしているが実現したことは一度もない。僕はこの虚無の中ソファーに腰を掛けた。膝の上の鳴いているクワはどこにもいない。ただ僕の家には虚しさが広がっている。テレビをつけても、スマホを見ていても、ただ宙を見ていても、僕の心は満たされない。部屋に僕の心を満たすものはどこにもない。
「おじゃましまーす。」
家のドアが開いた。その声は美緒のものだった。
「帰れ。」
「それは無理だね。君のおばさんに頼まれてね。」
「・・・、帰れ。」
美緒は図々しく部屋に入ってきた。
「いや、私は君と話したいもん。」
「あっそ。」
僕は自分の部屋に戻ろうとしたが、美緒はついてくる。
「どっかいけ。」
「無理。」
「・・・、出てけ。」
「そんなことより今日は何してたの?」
「・・・、高梨さんの家に行っていた。」
「高梨さん?」
「知人。」
「ふーん、学校は次いつ行くの?」
「明日。」
僕はパソコンを立ち上げると美緒は僕のベッドに腰を掛けた。
「ねえねえ。」
「どうした?」
「君は逃げないの?」
「前にも言っただろう。親の心配をかけたくないからだって。」
「でも君もう壊れかけているよ、このままだとまずいよ。」
僕は一瞬だけ考えて言った。
「僕は壊れてもいいんだよ。」
「そんなことない!」
美緒は鋭く叫ぶような声で反論した。
「君はいなくなっていい人間じゃない!そんな人間はいない。私は君がいないと楽しく生きられなかったかもしれないんだよ!」
「は?」
「覚えてないの?君が私を助けたこと。君は私が男子たちに囲まれたときに助けたんだよ。」
「・・・。」
そういえばそんな事もあった気がしてきた。でもそれは小さい頃の話だ。今の僕はもう落ちこぼれのような存在だ。
「美緒。」
「なあに?」
「いつもありがとうな。」
僕は鼓動を打つ心の中にある、ほんの一握りの思いを美緒に言った。
Dear.いじめられている君へ
最近の調子はどうですか。私が見る限り君は以前より明るい顔をしていると思います。なにかあったのでしょうか。噂によると如月美緒と仲良くしていると聞きます。私はこの手紙を書いている目的はあなたを少しでも励ますためですが如月美緒と仲良くしているのならこの手紙入らないのかなって思います。しかしもしかしたらまだ気分が上がっていないかもしれないのでこの手紙を書き続けます。ある意味自己満足の意味もあるかもしれません。もしあなたの心の支えに少しでもなると願って。
今日は学校に行く日だ。憂鬱ではあるが少し楽しみになってきた。美緒に会えるのが嬉しい。僕の今の心の支えは、クワと美緒だ。あと、差出人不明の手紙。最近少しずつ生きるのが楽しくなった。学校に向かおうと玄関に向かうと電話がなった。
「もしもし、間馬さんですか。」
「はい、そうですが。」
電話の相手はものすごく泣き出しそうな声をしていた。
「美緒が、美緒が・・・、今日自殺しました。」
如月美緒に続いて間馬ひさしも自分で命を絶った。私の手紙の効果はなかったようだ。でも仕方ない。
如月美緒。彼女は元々鬱病を患っていたようだ。そこまでメンタルが強くない彼女はいじめられている間馬くんを助けようとした。彼女が自殺したきかけは私の手紙だ。彼女は私が間馬くんにラブレターを送ったことで、彼が彼女のもとから離れることを恐れて自殺したのだろう。
間馬ひさし。彼が自殺したきっかけは至って単純。彼は如月美緒を愛していた。そんな彼女が死んだらもうこの世にいる意味がなくなったのだろう。彼女の葬式前日に首をつった。
「ねえ、クワ。寂しくなっちゃったね。」
クワにその言葉、そして彼の訃報が伝わったのかわからない。しかし、彼の訃報を聞いた後、クワはどこかへ行ってしまった。もしかするとクワなりに彼を弔っていたのかもしれない。
「高梨冥と高梨クワ、君たちはよくやったね。」
「ありがとうございます。」
クワはボスに、にゃあと答えるだけであった。
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