成子、東京へ

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 殺されると思い、震えが止まらない。以前、この部屋でお湯を張った浴槽に沈められコンセントに挿したドライヤーを放り込まれて感電死した女を思い出した。  その後、彼女の肉を肉団子と液体にするため、山奥で煮込んだりミンチにしたりしたことを思い出した。妻である自分がそんな目に遭うとは考えられないが、どうなるか分からない。今まで何人もの死を見届けて来たからだ。  正座をしていると、うなじに熱さを伴った鋭い痛みを感じた。スタンガンの電極を当てられ通電されたのだろう。遠くの方でバリバリという音が聞こえた。電気を流されていると、脳が一瞬働かなくなって少し遅れて音を感知する。  成子が痛みに耐えるために背中を丸めて悶えていると、髪の毛を引っ張られて無理矢理顔を上げさせられた。ユウコが髪の毛を握っている手とは反対の手に、夫が作ったディルドが握られていた。棒状の器具を見た瞬間、嫌な記憶が蘇る。 「それだけは、やめて」  と必死で訴えるも、恍惚に満ちた表情をしたユウコの耳に届くことはないようだ。彼女は成子の口の中にディルドを突っ込んだ。口蓋垂をディルドの先端で弄られて、おえっ、と言ってしまう。  ニーヒッ、ニーヒッ、と笑う彼女はディルドに付いているボタンを押した。これは夫が細工したディルドだ。陰茎の根本にボタンが付いており、ボタンを押すと先端からアンモニア水が発射するようにできている。  濃度は三十パーセントだ。喉に苦くて生っぽい激痛が走る。成子は思わず嘔吐物が顎を濡らした。喉が焼けるようだった。 「ユウコ、ありがとう。もういいぞ。今夜は君と一緒に寝てあげるからな」  夫の声が頭上から聞こえた。見上げると、ユウコは先程サヤカに噛み千切られた頬の傷口を夫に舐めてもらっていた。 「成子。佳苗のことはサヤカに任せることにする。でも、お前には別件で頼みたいことがある」  顔を使い終えたチリ紙みたいにくしゃくしゃにしながら、はい何でしょう、と返事をした。
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