犠牲から犠牲へ、魂からの繋がり

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「明美さん。お帰りなさい」  成子は明美のことを抱き締めた。予想していなかった光景だったので由樹は心底驚いた。絶対に通電地獄が待っていると思っていた。 「ごめんなさい。貴方が逃げるほど辛い思いをしているとは思っていなかったの。もうあの男のところに行かなくていいわ。本当にごめんなさいね」  赤子を扱うかのように明美の足から靴を脱がしてあげて、彼女の手を握りながら廊下を歩いていた。 「でも、私も気を付けるから、明美さんも私を失望させないでね。もう辛い思いをさせないようにするから、私の前から逃げていかないでね。私たちは浩司さんを殺した犯罪者同士なの。だから運命共同体なの。どちらも裏切ることは許されないの」  二人は一緒に居間の中に入って行った。由樹とアンジェラも彼女たちに続いて居間に入ると、明美が入り口近くで棒立ちしていた。 「どうしましたか」  と、明美の顔を覗き込もうとすると、床に人が倒れているのが目に入った。清江だった。清江は体を横にして、羽化寸前の蛹みたいな動きで身悶えしていた。由樹たちが驚いていることに気付いたのだろう成子は清江の傍に立って、 「この方は酷い裏切り者なのよ。次は貴方の旦那を殺すわよって伝えたら、いきなり泣き出しちゃって、やめてくださいって叫び出すの。だから男たちに頼んで、股間に電気流してもらったの。ねえ清江さん、今どんな感じなの」  清江の乾燥した皺まみれの頬に涙の痕が付いている。彼女の惨めな姿を目にした由樹は何が起きたのか全く理解できなかった。清江は成子の計画に最終的には賛同して、彼女に付いて行くと言っていたはずだ。なのにどうして、女性器に電気を流すほどの拷問を受けているのか。自分の夫を殺すことが決まる実感が沸いて来て臆したのだろうか。  由樹が突っ立っていると、成子がスタンガンを手渡して来た。
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