犠牲から犠牲へ、魂からの繋がり

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「由樹さん。貴方も清江さんに罰を与えるのですよ。それが貴方のためになるのです。なぜだか分かりますよね。清江さんに覚悟を決めてもらうためと、由樹さんの結束意識を高めるためなんです。一人の犠牲を出すことで、他の人たちの集団としての結束が高められますからね。  学校であったイジメと同じ原理ですよね。だけど今回はイジメと違います。今回は清江さんの旦那さんを殺すのですから、清江さんにはしっかりしてもらいたいのですよ。ただの犠牲ではございません」  ただの犠牲ではないか、と成子に反感を覚えた。清江が百パーセント損するのだから犠牲と言って良い。だが、ここで清江に手を下さないと自分が清江と同じ目に遭うのではないか、という恐怖を抱いた。  自宅には娘の彩花が自分の帰りを待っていてくれている、という現実を思い出した。ここで自分が死ぬ訳にはいかない。どんな手段を使ってでも生き延びて家に帰らないといけない。  由樹は清江の安物のペラペラなジーンズに手をかけた。引き摺り下ろすと、ジーンズの内側に血糊がネトっと付着していた。大陰唇がズタズタに引き裂かれて出血していた。小陰唇は浅黒く乾涸びて乾燥ワカメのようだった。体液が発酵したようなズシリと鋭利な悪臭が漂う。痛みが和らいでいないのか、まだヒクヒクして生きているようだ。思わず視線を逸らした。 「さあ、由樹さん。やっちゃってください」  早く終わらせたかった。スタンガンの電極部分を清江の陰部に押し付けてスイッチを入れた。  バチバチという音と共に、雷鳴と金属音の混ざったような叫び声が部屋中に響いた。叫ぶと同時になぜか歯が一つ口から飛び出した。成子は歯を拾って由樹に見せつけた。 「グッジョブです、由樹さん。やっぱり貴方は優秀ですね。今日は由樹さんだけステーキを食べさせてあげちゃうわ」  と、成子は由樹を絶賛した。成子がご機嫌になってくれたので安心感を抱いた。通電して良かったね、と由樹の本能が自身に告げている。これで自分の身の安全を確保できた。彩花のためだ。清江にはしっかり犠牲になってもらおう。
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