交錯する女たちの負の感情、底の底へ

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交錯する女たちの負の感情、底の底へ

 清江への拷問は毎日繰り返された。清江は睡眠を取ることを許されず、食事も一日にパンが一枚食べられるかどうかといった生活になった。これまで明美が受けて来た仕打ちを清江が受けることになった。  明美は一日二時間のみ睡眠を許されるようになった。だが、少しでも成子の機嫌を損ねるようなことをすると、すぐに由樹やアンジェラに通電させられるような生活だった。  以前、明美が成子から、清江に自分の小便を飲ませることを命じられていた。だが、その時明美は小便を出せなかった。 「明美さん、私の言ったことを実行できないんですか。逃げた時のように、また私を失望させるのですか。いい加減にして下さい。由樹さん、やってあげて下さい」  スタンガンで明美の陰部に通電を繰り返した。彼女はスタンガンを見ただけで怯えを通り越して薄黄色い泡を吹くようになった。  由樹やアンジェラは明美と清江を虐げるたびに褒められ、ご馳走まで食べさせてくれることもあった。そして夜、成子と一緒に寝ることを命ぜられるようになる。  寝室にて、ベッドの上で成子と一緒に横になっていた。彼女は寝る時もワイヤレスイヤホンと老眼鏡を外さなかった。  成子は由樹の細い腰から臀部を撫でまわし、乳房を弄ぶ。成子の肉が湿って温かかった。彼女に抱かれていると由樹は安心感を抱いた。こんな気持ち初めてだった。隆広に抱かれている時すらも感じられなかった綿毛のような快楽を、成子の蔦のように体に絡む温もりによって感じさせられた。  時刻は夜の二時くらい、成子の隣で寝ている。彼女に抱かれて過ごす夜がどんどん増えている。由樹かアンジェラのどちらかが成子のベッドで一緒に寝るか、成子が一人で寝るかだった。  清江はもう何日も睡眠を取っていないためか、意味不明な譫言を発するようになった。夜中、成子と一緒のベッドで横になっていると、廊下から清江の独り言が漏れ聞こえて来る。ぴーちくぱーちく、と一人で騒いでいた。 「由樹さん、あの時はごめんなさいね」 「え、何のことですか」  成子の手が由樹の頬を撫でる。 「由樹さんの自宅の前で待ち伏せした時があったでしょ。あの時の話」  浩司殺しの日に拉致したことに関して、初めて成子の口から謝罪された。 「私ね、あの時はまだ由樹さんのことを信用していなかったの。だって殺人計画自体良くないって言ってたでしょ。今から考えたら正義感から言ってくれていたんだと分かるけどさ、あの時は私に反発しているだけにしか思えなかったんだ。余裕がなかったの。許して。ごめんなさい。由樹さんなら許してくれるって信じている」  黙っていると成子は由樹の唇に自身の唇を押し付けた。
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