シャレコウベダケに、人の肉団子を食わす

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シャレコウベダケに、人の肉団子を食わす

 清江の解体作業は由樹とアンジェラと明美の三人で行うことになった。由樹たちは清江の死体を見下ろした。全裸で眠り、古木のような皮膚が痛々しい。解体を始める際、頭と胴体を切り離すところから始まった。全て成子の指示通り行われた。  三人交代でノコギリを引いて清江の首を切り離した。ノコギリを少しでも動かすと、すぐに肉の繊維に引っかかって、首を切るだけでも三時間もかかった。  朱色と白が混じった肉が首の断面からニョロニョロ伸びて床のフローリングの上に広がっていた。次に明美が小さめの包丁で顔を切り、そこの切り込みから残りの二人で皮膚を剝がした。皮膚と肉の間から赤い液体と茶色い液体を垂れ流し、顔が溶けていくみたいだった。剝がした皮膚はみじん切りをするように包丁で細かく切った。全身に皮膚を三人は協力して夜通し何時間もかけて剝ぎ取った。  皮膚を剥いだ肉は関節のところで切り離して小さくして鍋で柔らかくなるまで煮込んだ。長ネギの青いところと生姜を入れて臭いがなるべく出ないように工夫した。取り出した内臓は強火で液体になるまで煮込んだ。鍋の中の液体は近くの乾涸びた畑の中に流し込んで処分した。  柔らかくなった肉と骨はミキサーで細かく刻み、卵や片栗粉で一口大の肉団子を作った。居間に敷いたブルーシートの上には、元々清江だった肉団子が大量にでき上がって陳列されていた。  どんな気持ちになれば良いのか。余りにも非現実的な解体生活を送っていたため、通常の人間の感覚を失ったように思えた。世間ではすっかり冬になり、畑に捨てに行く際に雪が降っている日もあった。由樹は乾燥し切った自分の顔を触ってみた。成子の自宅に来てから、鏡を見ることが全くなくなった。自分が今、どんな顔をしているのか分からない。分かりたくもない。  浩司と清江、二人の死に関係した。自分の精神が穢れたことで自分自身の外見も穢れたことは何となく察せられた。  危機に瀕していることは十分に理解しているつもりだ。だが、どんどん汚水が溜まっていくように、体が重くなり行動ができにくくなっている。逃げようと思っても逃げる自信もなくてタイミングも掴めない。これが慣れの一種なのかと疑えるほど、現状からの脱出が難しく思える。
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