シャレコウベダケに、人の肉団子を食わす

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「あら、綺麗にできたじゃないの」  成子は居間に入って来るなり感心した。明美は深々と成子に頭を下げた。アンジェラは成子を見た途端に、オエ、とえずいた。 「では、旦那さんの元にこの肉団子を届けましょうか」  肉団子が潰れないようにクーラーボックスに丁寧に詰め込んだ。車に乗って清江の旦那が埋められている場所に向かった。運転席には成子の旦那が乗って、相変わらず爆音で昭和歌謡曲が流れていた。  外は真っ暗で外灯もない。星月しか光源となるものがない。その星月も曇った天気によって隠れている。何もない黒い空間をヘッドライトが切り裂きながら車は前方へと進んで行く。  山の中に入った。ライトに照らされて現れる木肌のざらついた質感や、斑模様がこれから起きる惨劇の前兆に見えた。路も整備されていないため、車は上下に振動しながら進んで行く。 「着いた」  車は停車した。外に出ると右手側に斜面があり、そちらの方から人の呻き声が聞こえる。どこかに清江の旦那の首が見えるはずだが、黒く影になった樹木が乱立しており見分けられなかった。  トランクからクーラーボックスを取り出す音が聞こえた。肉団子がぎちぎちに詰まったボックスが地面に置かれた。 「アンジェラさんと明美さんはこのボックスを持って上に上がって下さい。アンジェラさんは、清江の旦那さんの居場所は分かっていますよね。毎晩行ってもらっているのですから」  アンジェラが清江の旦那を腐らせていく仕事をしていたようだ。成子の言った通り、本当に誰もが殺人に加担するようにできていた。初めて殺人計画を実行しているとは思えない手捌きと計画性だ。  アンジェラと明美が二人でクーラーボックスを運びながら横歩きで山の斜面を登って行く。由樹は二人の後について進んだ。  二人が止まったので、由樹も立ち止まった。前方を見ると呻き声を発している物の影が視界に入った。黒い大きめのマッシュルームのような物体が地面から生えている。近くに寄って見ようと歩を進めると、酸を含む強い腐敗臭と便臭と生ものの臭いが交じったような刺激臭が鼻を突いた。思わず顔を顰めて立ち止まった。 「進んで下さい」
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