シャレコウベダケ、いつまでも傍にいるよ

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「その先に、白骨化した死体が放置されていたのでしょうか」  女性アナウンサーが尋ねた。 「はい。この先に手首と足首を布で括られて、地中から頭蓋骨だけを晒した死体が発見されました」  キャア、と叫び声が出た。浩司の埋められる場面を思い出した。清江の旦那の腐った頭の映像が浮かび上がった。同時に辺りに漂う腐敗臭や便臭などが思い出された。  漆黒の泥土の中で不気味なキノコのような、蠢く蛆に食われ続ける死骸の幻影が由樹に付きまとっている。どこかに行ってほしい。皮膚がずれ落ちて、口のあった場所に大きな空洞を作っていた物体が自身の周囲に浮遊しているような恐怖が植え付けられていた。 「死因は何なのでしょうか」 「ただいま検証中とのことです。ただ腐敗が酷く、すぐの原因解明が難しいとのことです」  耐え切れなくなり、テレビを消した。 「どうしたの、由樹」  隆広の声が頭上から聞こえる。由樹は自分の顔を手で覆ってしゃがみ込んでいるため、彼がどんな顔をしているのかは分からない。きっと困惑顔をしていることだろう。自分のバンドがテレビ出演していた時のように途方に暮れた顔をしているのだろうか。  自宅に戻って来ても成子の呪縛からは完全に解き放たれなかった。テレビを観て意味が分からなくなっていた。どうして浩司や清江の旦那と同じような死骸が和歌山の山奥に存在するのだろうか。確かにテレビのレポーターは言っていた。手首と足首を布で括られて、地中から頭を出した死体があったと。  浩司も清江の旦那も殺した場所は、もちろん和歌山県などではない。秩父駅の近くの山であるため、埼玉県内の山だろう。同時頃に同じように殺された人間がもう一人いたということか。成子のような悪魔が同時にもう一人関西にいるというのか。
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