シャレコウベダケ、いつまでも傍にいるよ

5/5
前へ
/164ページ
次へ
 そんな偶然があるのだろうか。とても信じられない。何か裏がある気がした。成子の裏に何か別の人間がいるのだろうか。何者なのかは全く想像することができないし、そんなことあり得ない気もした。 「ごめん、もう寝るね。疲れっちゃった」  フラフラと寝室に向かった。ちょっと、と隆広が呼んでいる声が聞こえたが、もう事情を喋る気力は残っていなかった。寝室では彩花が布団に潜って寝息を立てている。  今頃、アンジェラや明美は清江の肉を無理矢理旦那に食べさせているのだろう。腐った人間に腐肉を食わせている。人のやる所業ではない。  生命力に溢れている彩花を見て、人間の精神を保つ存在の有り難味について考えた。そういった支柱のない明美は気狂いになっていた。成子にくっついて自我というものを捨てた妖怪のように見えた。大輔という恋人のいるアンジェラはまだマシなのだろうか。  明美に腹が立つ。静かで無表情な顔で成子にくっつき虫をしている姿がムカつく。彼女はパチンコ売春で自分の体を売って金を作り、成子に金を渡している。まるで鵜飼の鵜だ。  明美に対する反感を抱いてむかっ腹を立てるも今はそれどころではない。成子というバケモノからの逃亡を考えないといけない。成子はこのアパートの住所をなぜか知っている。既に由樹が逃げたことも気付かれているだろう。ゆっくりしている余裕など一時もなかった。  恐らく彼女は一人で行動している訳ではなさそうだ。成子には仲間がいる。その者が和歌山でも殺人を犯したのだろう。  逃げなければ。そんな人間が知る部屋にいつまでもいる訳にはいかない。ここにいれば必ず成子が迎えに来て連れ戻される。殺人に関与していると知っている人間を放置する訳がない。絶対にこの部屋に来る。今日はよく眠り、明日考えをまとめて隆広に伝えようと決めた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加