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 夜が更けるまで私が送り続けていた不満や嫉妬をぜんぶ既読無視して、雅也から一通だけ返信が届いた。 『いつものデートと特別なデート、どっちがいい?』  反応が返ってきたことに心底ほっとして、ほっとしたところで怒りも湧いてきた。  雅也はこんなふうに、いつも私に決断をゆだねる。優しさゆえのそんな優柔不断さにすら魅力を感じて六年間愛してきたし、それが雅也だ。  だけど今日の雅也は、私に選ばせているように見せかけて、救いのない選択肢しか与えてくれない。  絶対に、あの女の入れ知恵だ。縋りつくしかできない私を、隣であざ笑ってるに違いない。  ムカムカしながら打ち込んでいた画面の『いつものデートがいい』という字面を見て、さらに腹が立ってきた。これじゃあ私が希望しているみたい。  長年の付き合いで、普段はウインドウショッピングをしたり、私の好きなカフェ巡りをしたり、他愛のない休日を過ごしてきた。それを私たちはいつものデートと呼んでいる。一方、記念日や誕生日にする特別なデートでは、雑誌に載っているようなデートスポットへ出かけ、少しいいお店で食事をしてきた。  私たちが築き上げてきた日常の過ごし方に、別の女が割り込んでくるのはすごく嫌だ。だけど、三人で出かけることを私たちの特別な日に並列させることはもっと嫌だった。  あの女――瑠香が、なにを考えて、雅也をどうたぶらかしているのか、私のテリトリーで品定めしてやらないといけない。これは雅也をめぐる戦いだ。燃えあがってきた闘志に任せて、『がいい』を削除して雅也へ一言返信した。
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