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「あれ、今日はいつものデートだったよな?」  日曜、待ち合わせの駅前にやってきた私の全身を眺めて、雅也が間抜けな質問をした。  雅也の隣に佇む瑠香が、その華奢な体をダボっとしたグレー色のスウェットワンピに包んでいるのを見て、舌打ちが出そうになる。春らしいとろみ素材のセットアップに身を包んできた私が、まるで道化だ。  私はこれまでさんざん手抜きファッションでデートを重ねてきた雅也ではなく、むしろ瑠香を意識して服装を決めてきたというのに。もしかして、 「逆にマウントとってるつもり?」  雅也ではなく瑠香に直接棘を刺す。刺されたことに、瑠香は不思議そうな顔をした。 「え、なにがですか?」 「まあまあ、せっかくの初デートなんだし、仲良くしよう」  やっぱり間の抜けている雅也のことを、もはや殴りたくなってきた。殴らないけど。  どんどんため込まれていく苛立ちのまま、三人での“初デート”は幕を開けたのだった。  
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