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 このあとバイトなので、私はここに残ります。瑠香がそう言って助かった。  二十三歳、学生ではないと聞いていたのに「バイト」という立場らしい。多少引っ掛かりはしたけれど、それよりもいったん頭を落ち着かせたかった。このまま話の通じない状態で会話を続けるのはストレスがどんどん蓄積するだけだ。  いつものように雅也に勘定を任せて、先に扉を開けて外へ出る。  道路を走る自動車、道行く人々、歩道の脇に等間隔に植えられたハナミズキ。普段と変わらぬ景色がそこにあって、私はようやくひと息つくことができた。 「お待たせ」  カフェから出てきた雅也に声をかけられて、振り返る。二人きりになったのがなんだかすごく久しぶりに思えた。  こんなことになる前は、恋人だった六年間は、ずっと雅也は私だけのものだったのに。そう思うと、切なさに胸が締め付けられる。 「雅也。こんなわけのわからない関係なんてやめて、私と寝る?」  優しい雅也は困ったように微笑んだ。 「佑月に痛い思いをさせるのはやだな」  セックスが、痛い。ただそれだけの単純な問題が、どうしてこんなに複雑な事態になってしまったのだろう。  
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