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音楽について 1
今年一月に反田恭平さんと務川慧悟さんの2台のピアノコンサートに主人と行きました。生の演奏会は何年ぶりでしょう。そのとき、務川さんがアンコールで弾かれたラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』がとても素敵だったので、その場で務川さんのラヴェルのCDを購入しました。
モーリス・ラヴェル。
私はこの作曲家のピアノ曲が実は苦手でした。
初めて音楽の授業でラヴェルの『水の戯れ』を聞いた時、変わってるなあと思うだけでピンとこなかったのでした。
ですが、『亡き王女のためのパヴァーヌ』(ラヴェル自身はあまり好きではなかったらしい)は好ましいと思っていた曲でした。優しくて美しい、そして寂しくて物悲しいのになぐさめられるメロディが心にすうっと入りました。
ラヴェルで誰もが聴いたことがある曲に『ボレロ』があると思います。フィギュアスケートの季節になるとテレビから聞こえてきますね。私も『ボレロ』好きです。ラヴェルの曲には繊細で正確な計算されたような美があります。
務川さんのピアノの弾き方はそんなラヴェルにぴったりだなと思いました。
氷のように遠目で見るときらきらと透明で硬質で美しく、それでいて触るとカシャンと割れてしまうようなラヴェルのピアノ曲たち。
私はちょっと怖かったのかもしれません。自分とは対極の精密な美が。
務川さんのCDをずっと聴いているとラヴェルの美しさを身近に感じられるようになりました。気むずかしくて、人見知りをするタイプの人間はとっつきにくいけど、実は暖かなかたであることもあります。そんな感じでしょうか。
若かりし私がぴんとこなかった『水の戯れ』もタイトルの通りの美しく心地よい曲だと感じられるようになりました。
ラヴェルのオケの曲はまたピアノ曲とは違う面白さがあるけれど、ラヴェルのピアノはピアノでいいなあと今は思います。
音楽は聴きこめば聴きこむほどイメージが広がったり耳に馴染んだりして、自分の中に砂時計の砂のように落ちていっていっぱいになる気がしますね。
歌には歌詞があり、言葉というメッセージが曲と共に心に入ってきて、響くことがあります。歌もとても好きです。
でも、私は歌よりも歌詞のない曲、とくにクラシックに魅力を感じます。作曲家はもちろんメッセージを込めて作っているのでしょう。けれど言葉がない分それは限定されなくて、聴く人に委ねられる自由度が高い気がするのです。まさに「感じる」ものだと思います。音楽に身を浸していると、恍惚とした気持ちになる時があります。初めて聴いた時の記憶が蘇るときもあるでしょう。失恋など悲しいとき、幸せの絶頂のとき、音楽は記憶と密接になっていて、心と脳を揺さぶりますね。
だからかな。一度聞くより二度目、三度目と聴くほうがより深く曲に入り込める気がします。色んな記憶や想いが増えていくからかもしれません。
そして、ラヴェルのように苦手だった曲がとても愛おしくなることもありますよね。
もちろんファーストインプレッションが素敵だと初めから好き! と思えるし、聞き続けるうちに辛い記憶と重なって嫌いになることもあるでしょう。芸術に対しての感覚は本当に自由で、誰にも邪魔されない領域だからこそ人は心惹かれるのかもしれません。
まだかたりたいことがあるのですが、長くなりましたので今日はこの辺で。次も今回の延長で音楽についてにしようと思います。
お付き合い頂きありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
2023.5.25
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