音楽について 2

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音楽について 2

 前回は務川さんのラヴェルを中心に思考を広げていきましたが、今日は一度きりの演奏(ライブ)についてかたります。  十一月の反田恭平さんのチケットが取れたので、今、予習としてブラームスのピアノ協奏曲1番を聴いています。  前回話したように第一印象も大切だと思いますし、「初めて」は一回きりだから予習なんてしないほうがいいのかもしれません。  ですが、私はある程度聴きこまないと曲の良さが理解できないタイプです。特にピアノのように一つの楽器ならともかく、オーケストラの演奏ともなると音があまりにも多くて情報についていけないんですよ。大体の雰囲気や響きは感じられても、この曲のこの部分が好き! となるまでには時間がかかってしまいます。  昔は録音技術なんてものはありませんでした。演奏は一度きり。指揮者が変わるだけで曲の解釈、雰囲気はずいぶんと変わりますし、演奏者が変わってももちろん変わります。だから全く同じ演奏を聴くためには、録音されたものを聴くしかない。  昔の貴族やパトロンのかたたちは耳が肥えていたのでしょうね。だからこそ一度きりの演奏を感覚のままに楽しんで聴いたのでしょうね。私は一度きりの演奏では曲を理解できませんから、うらやましい!  こんなふうに書いていると、音楽ってもっと気安い楽しいものじゃないの?! と言われてしまいそう。いえいえ、そうですよ、私もそう思います。  けど、言わせてください! 何度も書いてますが、ホールで聴く演奏は一度きりなんです。飛行機に乗ってまで行く、反田さんの演奏は一度きりなんですよ!  私は反田さんのピアノ、特にオケとやるときのオケに負けないのにしっかり溶け込むなんともいい響きが大好きなんです! だったらその一回でなるべく細部まで聴きたいじゃないですか! これは押し付けでもなんでもありませんが、私はそう思って予習に聴いているのでした。「反田さんはここ、こんなふうに弾くんだ〜!」とキュンキュンしながら聴きたいんです。  ところで、ブラームスのピアノ協奏曲1番は、私にとってはとても難解な曲です。  初めて聴いたとき、なんじゃ、この重厚すぎる音楽は〜!!! と聴いてて少しきつかったです。メロディもなかなかすとんと心に入ってくれず。今は何回ぐらい聴いたでしょうか。三十回は聴いてないかな、まだ。夕飯の後片付けの時にイヤホンで聴いているのですが、時々、「今日はショパンのピアノ協奏曲にしちゃえ!」と逃げることも。最近ようやくメロディも分かってきて、聴きながら口ずさめるようになったところです。昨日たまたまずっと聴いていたオケと違うオケのを聴いてみたのです。そして、やっぱりオケの音楽は面白いわとニヤニヤしてしまいました。印象が全く違ったんです。本当に興味深い!  ショパンコンクールのファイナルを去年は延々と聴き比べてましたが、その時もすごく面白かったのを思い出しました。ショパンコンクールはオケは同じ。ピアニストが違うだけです。なのに、ピアニストが違うとオケの音が、曲の雰囲気が全然違ってくる。そして、私は反田恭平さんにどハマりしたのでした。何が違うかはよくわかりません。  私のイメージは反田恭平さんは柔らかい、赤みが少し強い紫。ブルース・リウさんは濃いパキッとした青。小林愛実さんはすこーし赤みの入った深い濃紺でした。リウさんは本当技術が高くてスタッカートとメリハリがはっきりしていました。小林さんはとにかく音に透明感があって、そして、弱音がすごく切なくて綺麗でした。反田さんはね、柔らかいんです。音がまろやかで尖がなくて、オケに馴染んでる。オケまで柔らかい音になってました。特に低い音が柔らかく響くのが好きです。ピアノの音なの? と思うときも。私は精神の波が激しいので、きついときにも寄り添ってくれるような反田さんのショパコンファイナルの演奏が本当好きになりましたね。もう何回聴いたかわかりません。たぶん三桁は行ってる。  でも、反田さんが他のオケとショパンのピアノ協奏曲1番を弾いたのを聴いたとして、こんなに心地よく感じるかは分かりません。きっとまた印象が違うはずです。それもまた楽し。  反田さんの奏でるブラームスピアノ協奏曲1番はどんなだろうと、まだまだ先のことなのに考えるだけでわくわくがとまりません。  演奏は一度きり。だから集中して楽しんできたいです!  今回長かったですね。読んでくださってる方ありがとうございます。  またのお越しをお待ちしております。           2023.5.26  
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