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目じりを下げて笑う顔は本当に楽しそうで、普段教室内でも見ているだろうに何となく笑顔の質が違ってみえた。 捕まれた鼻がヒリヒリと痛みだして、俺は翔琉を睨んで手を放すように目で訴える。 口を開けば不明瞭な言葉が出る事が分かっていたからだ。 揶揄われるなんてまっぴらごめんだった。 「その目がなぁ、なーんかマズいんだよなぁ。」 ほんの少し動きを止めて俺の目を見つめた翔琉の言葉に何かかゾワリと背筋に上った。 条件反射のようにピクッと身体が震えた事で俺の緊張を感じとったのか、翔琉は手を放してくれた。 「急に鼻なんてつまむなよっ。痛いじゃないか。それに、パンも返せっ。俺の昼飯なんだから。」 俺の中で翔琉に対する遠慮みたいなものはなかった。 確かに容姿は黒い眼鏡にダサい髪形の陰キャではあっても理不尽な事に対する怒りは沸くのだ。翔琉がどういうつもりでここにやってきて俺にちょっかいをかけるのか分からないけれど、それでもいい様にされる謂れはない。 急に言い返してきた俺に驚いたのか、翔琉は一瞬目を見開いて俺を見たけれど、次の瞬間破顔した。 「悪いっ、悪いっ。そうだよな、悠だって怒るよなっ。」 「そうだよっ。俺怒ってるんだってば。何で笑ってるんだよっ。」 何故か嬉しそうに俺を見て笑っている翔琉の顔に、やっぱり揶揄われているのかと俺はどうしてか怒りよりも悲しみが沸き上がってくる。 翔琉が俺に話しかけてくれるのは気まぐれでしかなく、たまたま毛色の変わったクラスメートに目が留まっただけなのだろうか、と思えたからだ。 「もっ、いいから行けよっ。そのパンやるからっ。もう、いらないからっ。」 つままれた鼻の奥がツンとして、じんわりと涙が浮かんでくる。 ヤバイ、こんな奴の前で泣いたりなんて出来ない。 「はやくっ行けって。」
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