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一刻も早く俺の前からいなくなって欲しくて俺は翔琉の顔を見ないように顔を伏せた。 こんな事ぐらいで涙が出るのが不思議だったし、原因は翔琉にあるような気がして目を合わせられたなかったからだ。 早く行ってしまえばいいんだ…。 そんな風に思っていた俺の頭をクシャリと撫でる感触がした。 「悪かったよ、悠。ごめん…。」 その声が凄く優しく響いて、俺は何だかもっと泣きたくなった。 何度も繰り返し撫でてくれる翔琉の手の感触が俺の心のどこかに触れたのか、気付けば俺はグスグスと鼻を鳴らして泣いていた。 どんなに顔を隠していてもきっと俺が泣いている事はバレているだろうに、翔琉は何も言わずずっと俺の頭を撫でてくれていた。 暫くして俺の泣き声が止んだことに気付いたのか、翔琉は立ち上がると俺の手に何かを押し付けていく。 え?何?と思ったけれど、涙が出るに任せて泣いていた顔は酷い有り様だと想像がついたし、今は泣いた事について何か言われたくはなかった。 俺が顔を上げない事をスルーして、翔琉は俺の手に再度ソレを持たせると、 「それ、俺の弁当。な、交換しようぜコロッケパンと。」 と言って足早に階段を下りていってしまった。 「おっ、おいっ。」 驚いて思わず上げた顔に翔琉の視線を感じたけれど、翔琉は何も触れず。 「ちゃんと食って返せよ。」 とだけ言いおいて去っていった。 あっという間の出来事に呆然としていたけれど、俺の手には翔琉が置いて行った弁当箱が一つ。嘘ではない現実の重みをもって俺の膝に鎮座している。 「どうしろって言うんだよ……。」 本当にこれを食べてしまっていいのか判断が付かない。 それでも俺の手元にあったパンは翔琉が持って行ってしまったし、泣いてすっきりしたのか思いの外腹が減っている。 このままこれを持っていてもしょうがない、と俺は翔琉の弁当を開けた。
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