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「なぁ、悠ぁ。お願いって。俺、今度悠と会ったら絶対飯に誘うって決めてたんだから。」
何、それ。
俺と再会するつもりでいたって言うのかよ。
「悠だって話す事いっぱいあるだろう?俺と離れてからの事とかさ。」
「そ、そんな事っ。」
「何だ、何もないの、悠?」
「グッ。」
揶揄うようにそう言われて、俺は言葉に詰まる。
どうだ、その通りだろう。
とでも言うように翔琉の顔はニヤニヤとした意地悪な笑みを浮かべている。
「あるっ。あるに決まってるだろっ。俺にだって。お前に話したい事。」
「だろう。じゃ、明日の19時な。決まりっ。」
やられた、と思った時には俺は翔琉と明日食事することになってしまっていた。
ああ、また翔琉のペースだ。
「ああ良かった。悠と飯。楽しみだなっ。」
「お、おいっ。」
「あ、今日は揚げパン。2つな。」
「え、あ、ああ。」
「じゃ、後で連絡したいから携帯だせって。」
「え、あ、ああ。そうか。」
言われるまま携帯を差し出すと翔琉はちょいちょいと何か操作をしてから俺の手に戻す。
「それじゃまた明日。これ、このまま持ってくな。」
揚げパンを2つそのまま手に持ち、爽やかに去っていく翔琉の背中を見送って。
気付くと手の中には揚げパン2つ分のお金と、見たことのない番号が登録された俺の携帯電話がじんわりと熱を持ったまま残っていた。
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