0人が本棚に入れています
本棚に追加
レンズを通した自分の部屋で何かが動いたからだ。目を見開いて凝視する。そこにいるはずの無い人物が映し出された。
「先輩?」
先輩が挙動不審に部屋を歩き回って物色している。タンスに手を掛けた。
あ、だめ。そこは……。
先輩はタンスの引き出しから私の下着を抜き取り、自らの鼻に近づけた。恍惚の表情。恥ずかしさで死にそうになりながら見守っていると、下着の一枚をポケットに捩じ込んで満面の笑みを浮かべた。
私は望遠鏡から離れ、改めて部屋を見回した。ここ最近、定期的に下着が消えていたのを思い出した。机の下に意味ありげな小箱を見つけた。まさかと思いながら箱を開けると、失くした下着が溢れんばかりに押し込まれていた。
息を呑む。
先輩が私の部屋に侵入して下着を盗んでた?望遠鏡で私の私生活を覗き見、学校では盗撮を……、そんな、どうして。
深呼吸を繰り返して、考える。やがて、一つの結論に行き着いた。
先輩は私の事が好きなんだ。
恥ずかしくて、近所で私と会わないようにしていたんだ。私が校門前で下校する雰囲気がなかったのを確認して、部屋に侵入したんだ。きっと合鍵なんかも造ってるはず。
先輩は、先輩を追いかける私を追いかけていたんだ。私が先輩を愛しているように、先輩も私を愛していたんだ。
「素敵……」
私は再び望遠鏡を覗いた。
「先輩、遠慮しないで好きなだけ下着、持ってってくださいね」
今度、もっとエッチな下着を買っておこうかな。あ、窓際で着替えるのも良いかも。少し恥ずかしいけど、それで先輩が喜んでくれるなら、私、頑張る。
「うふっ、楽しくなってきた」
これからも私は先輩を追いかける。先輩に追いかけられながら。相思相愛、私と先輩だけの、愛のかたち。
最初のコメントを投稿しよう!