愛のかたち

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 先輩の後ろを追いかけてしばらく経った頃、私はあることに気が付いた。段々と私の家に近付いているのだ。これは一体どういう事だろう。考えあぐねていると、先輩の足がふ、と止まった。  建物の中へと消える先輩を見て唖然とした。その二階建てのアパートは、私の住むアパートの真ん前にあった。  こんなに近くに住んでるなんて全く知らなかった。同じ学校に通う以上、登校時間も重なるはずなのに、でも、私はこの辺りで先輩を見かけたこともない。どうして。どうして。  疑問が次々と湧き、頭の中を支配する。同時に底無しの嬉しさが込み上げた。私はハッと我に返って先輩の後を追ってアパートに入った。しまった、見失った。これじゃ先輩がどこの部屋なのか分からない。  途方にくれていると、一室のドアが音を立てて開いた。咄嗟に物陰に隠れて様子を窺う。――先輩だ!  制服のまま着替えてもいない。どこに行くんだろう。追いかけようか、というところで踏み留まる。ううん、待って。迷った挙げ句、先輩が建物から出て行くのを見送った。  甘美な誘惑だった。蜜に誘われる蝶々の様に、私の足はフラフラと先輩の出て行ったドアへと向かった。犯罪なのは分かっている。それでも自分を止められなかった。  不用心に施錠されていないドアを開けると、男の匂いがむわっと溢れ出た。胸いっぱいに吸い込んだ。ああ、先輩の匂いだ。  靴を脱いで奥まで進む。  「……え?」  絶句した。壁一面にずらりと写真が貼り付けてある。全て中央に同一人物が写っていた。 「コレ、私だ……」
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