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お弁当を食べてる所や友達とお喋りしている所、体育の時撮られたであろうものまであった。
どれもこれも撮られた覚えがない。鳥肌がざわざわと腕中に広がる。
盗撮?先輩が……私を?
部屋を呆然と見回していると、カーテンの閉め切った窓際で視線が止まった。カーテンの隙間から僅かに陽光が差し込んでいる。三脚に支えられた細長い筒の様な物が鎮座し、筒の先端がカーテンの隙間から窓外へ向けられていた。
実物を見るのは初めてだった。それでもすぐにそれが何なのかが分かった。
望遠鏡だ……。
背中を冷たいものが伝った。少し迷ってから、恐る恐る望遠鏡を覗き込んだ。
向かいのアパートの一室が拡大されてはっきりと見てとれた。全開になった黄色いカーテン。家具の配置まで鮮明に見える。
見間違えるはずもない。私の部屋だ。
全身に寒気が走る。同時に顔面が燃え上がる様に熱い。
見られてた。どうしよう。どうしよう。
私は普段部屋にいる時、カーテンを閉めることはまずなかった。昼間はカーテンを開けて過ごす。朝は陽の光で目覚めたいから、夜間も半分開いた状態にしておくのが習慣だった。部屋は二階だし、誰かに見られるなんて考えもしなかった。
胸が痛いくらい高鳴っている。私生活が覗かれていた焦りと、先輩の行動への疑問が脳内で混じり合い、パンクしそうだった。
「――あっ」
思わず叫んだ。
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