第一章 ゼロから始まるフラダンス部

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──2025年春── 私は無事、高校入学を果たした。 県立聖海(せいかい)高等学校。ここが私が新しく学校生活を送る高校だ 。 今日は入学式。真新しい紺のブレザー。濃紺色のネクタイはリボンとの選択が可能で、私はリボンを選んだ。可愛いし。 スカートは緑のタータンチェック柄で、爽やかさを演出している。 スカートから体育館の床に伸びる二本の大根を見て、ため息と母親への恨みが吐き出された。 お母さんの足は太いと思う。遺伝が憎い……。 半分は陸上で鍛えられた筋肉のせいだけど。 『──で、ありますので新しい学舎で生徒全員が切磋琢磨し、協調性を学び──』 校長の話と言うのはどこも長いものだ。聞いた話だと校長挨拶のマニュアル?があるらしい。 喉から漏れそうな欠伸を我慢したら涙が出た。居ないとは思うが入学に感動して泣いてると他の人に勘違いされるのは嫌だ。 知った顔が何人か居るが、話した事も無い他クラスの子ばかり。ちょっと寂しい。 しかし……あれは何だろう?私の視界に嫌でも写りこむ派手なギャル。高校デビューってやつなのか? あともう一人、小柄で小動物みたいな女子に目が行く。長い黒髪を後ろで束ね、肩をすくめている。髪を結ぶ淡いピンク色のリボンが可愛らしい。しかし、その顔には不安が見て取れた。 色々な生徒が居るのは中学も高校も変わらない。ギャルは別として。 と、そんな事を考えてるうちに長い長い校長の話が終わった。これだけで今日の体力を全て使い果たした気がする。 『続きまして学校担任の挨拶──』 教師が入れ替り立ち替り壇上で挨拶を行う。 私の担任は佐藤真夏(さとうまなつ)先生だ。入学式前の教室でおっとりした優しそうな先生の雰囲気に男子どもは先生の気を引こうと変に目立っていた。高校生になっても男子って子供なのか?
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