第一章 ゼロから始まるフラダンス部

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既に教室には半数以上の生徒がおり、ザワザワと声が飛び交う。 フラダンス部が無い以上、私には聖海でやりたい事も無い。ならばせめて友達を作って楽しいスクールライフを送るしかあるまい。 とは言え──話しかけるネタが思い付かない。お洒落に無頓着で好きなアイドルも居ない。趣味と呼べるものも皆無だし、みんなどんな話をしてるのだろうか? とりあえず心に残るようなインパクトのある自己紹介をせねば。昨日の夜、必死こいて考えて暗記するまで二時間を費やしたのだ。 「先生来たっ!」 女子の一人が後ろのドアから机に走り戻る。高校初日だ。ちょっと緊張する。 教室前のドアが開き、佐藤先生が入って来た。薄紫のスーツに高そうなブラウス。流石は大人の女性だ。化粧もナチュラルで美人さんの部類に入るだろう。 「皆さん改めまして。一年二組担任の佐藤真夏です」 先生に熱烈な拍手が飛んだ。一部の男子からだが。 「それでは窓際の一番前から自己紹介お願いします」 先生の自己紹介宣言で、一番前の男子が立ち上がった。 「矢部徹!野球部入部予定!四番ホームランバッター目指してます!」 五分刈りの坊主頭。如何にもって感じだ。頑張れ。 「藤島桐子、趣味は料理とお菓子作りです。家庭科部に入部したいと思います。よろしくお願いします」 女子力高そうな黒髪ロングヘアー。スタイルも良さそう。足なんかモデルみたいにスラッとしている。何だか知らないが負けた気がする。 自己紹介は順調に進み、いよいよ私の番が来た。本当ならフラダンス部入部しますって言いたかったが、だいぶ挨拶の内容は変えたのだ。昨日の夜その事で暗記まで二時間かかったと言う訳。 「海凪奈瑠美です!」 元気良く立ち上がる私。しかしその刹那、頭の中が真っ白になってしまった。あれ?このあと何て言うんだっけ?
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