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しばらく進むと、今度は60ぐらいの太った老人が道の端に立って親指を立てて立っていた。
雨の中、傘も差さずに男の運転する車をじっと見つめている。
深夜ということもあり、男はブレーキペダルを踏み老人の近くに車を止めた。
すぐさま後部座席のドアを空けて老人が乗り込んでくる。
「いやぁ、助かりましたよ。こんな大雨の中、まったく車が通らないもんだからどうしようかと思ってしまいました」
「いったいどうされたんですか?」
男は車を発進させながら尋ねた。
「車がエンストしたんですよ。もうずっと昔から乗ってる車だったんですがね。なんともまあ、こんな日に止まってしまいまして。LAまでまだかなりあるっていうのに。あ、私、LAに行く途中だったんです。できればそこまでお願いしたいんですが」
「ああ、それはお気の毒でしたねぇ。実は私もLAに行くところでして。別にいいですよ」
「それはありがたい」
「ところで、LAまで何しに?」
「娘に会いに行くんです」
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