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やがて、今度は一人の少女に出くわした。
深夜のハイウェイ。
傘も差さず、雨に打たれながら親指を突き出している。
男はスピードを緩めて少女の前に止まった。
「どうしたんだい、こんな夜更けに!」
すぐに窓を開けて少女に声をかける。
10歳くらいだろうか。少女は何も答えず、黙って男を見つめていた。
「とりあえず乗って!」
男は車から飛び降りると、少女を後部座席へと押し込んだ。
続いて自分も運転席へと戻る。
まさか女性と老人に続いて子どもまで拾うとは。
男はダッシュボードからタオルを取り出して少女に手渡した。
「洗車用だけど、これ使って。風邪ひいちゃうよ」
ポタポタと雫が前髪から落ちている。
少女は手渡されたタオルをジッと見つめていた。
「何かワケありかい? どうしてこんなところにいたんだい?」
少女は渡されたタオルから目を背けることなく答えた。
「会いたい人がいて……」
可愛らしい小さな声だった。
女性の時もそうだったが、どこかで聞いたことのある声だと男は思った。
「会いたい人?」
彼の言葉に、少女は初めて視線を動かした。
うつろな目で男を見つめながら少女は答えた。
「娘に……会いに……」
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