娘に会いに

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 なんの冗談だろう。  雨の降る深夜に拾ったヒッチハイカーたち。  年齢も性別も違うが、目的が同じだ。誰もが皆、娘に会おうとしている。しかもそのうちの一人はまだ子どもである。どう見ても娘がいるようには見えない。  そこで初めて男は自分が置かれた立場が異常であることを悟った。  これはもしかして、とんでもない現象に出くわしてしまったのではなかろうか。  深夜のハイウェイを進むうちに、いつの間にか異次元に迷い込んでしまったのではなかろうか。  そう思ううちに、助手席に座る女性も後部座席に座る老人も少女も不気味に思えてきた。女性の方はともかく、あれほど饒舌にしゃべっていた老人も黙ったままだ。  男は次第に怖くなった。  もしかしたら自分はとんでもないナニかを乗せてしまったのではないか。  ハンドルを握る手に力がこもる。  車のデジタル時計は午前0時を表示していた。  男は思わずラジオのスイッチを入れた。  スピーカーからレトロな音楽が流れてくる。沈黙した車内が一気に明るくなった。 「へえ、ゴートゥーマイホームですか」  音楽を聴いていた老人が口を開く。 「この曲、好きなんですよ」 「私も」  助手席に座る女性も老人に同意するようにポツリとつぶやく。  長かった沈黙が破られて、男はようやくホッとした。
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