ボッチくんの恋…この気持ち、なんだろう?

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一睡もしないうちに明け方になった。 夜明け前、月が沈み 1日で1番暗い時間がきた。 急に冷たい風がさあッと吹いて バタバタと雨が降り出した。 雨も風もどんどん強くなって とうとう嵐になってしまった。 ぼくは慣れてるけど ツルバラさん大丈夫かなあ それは彼女が咲いて 初めての雨のはずだった。 そのうち雨は止み 最後の強い風がびゅうっと吹いた。 雨をたっぷり含んで重たげに俯いた ツルバラさんの花びらが… あーーっ! 1枚1枚、ガクを離れ… はなびらは次々と ヒラヒラ踊るように ぼくのとろこに飛んできた。 そして ぼくのほっぺたをそうっと撫でるモノ 頭の上をかすめるモノ 何か優しく囁きながらぼくの周りを回ったりして みんなフワーっと、 どこかに、飛んでゆく。 それは本当に一瞬の出来事だった。 元いた枝には芯だけ残して ツルバラさんは 綺麗さっぱり姿を消していた。 たった一枚、ハート型の花びらが 雨に濡れたぼくの胸に ペタリと張り付いて離れなかった。 ぼくは胸にツルバラさんをくっつけたまま ドキドキして黙っていた。 ツルバラさんもぼくの胸に ぴったりくっついて黙っている。 濡れたツルバラさんは 冷たいぼくの胸にくっついたりして寒く無いだろうか ぼくのドキドキがツルバラさんに 伝わってうるさくないだろうか 僕たちは 夜明けまで ずっと黙っていた。 日が照り出して僕が乾くと ツルバラさんの最後の花びらは ふうっと僕から剥がれ落ち 風に乗って行ってしまった。 ツルバラさんが張り付いてた僕の胸は いつまでもジンジン熱かった。 ドクダミさんが話しかけた。 昨夜、彼女きたんでしょ? うん、だけど… もうどこかに、いっちゃったみたい そりゃそうよ バラはドクダミと違って 風と共に去るからねー でも良かったじゃん! またきっと、秋に会いに来るんじゃない? ふうん、そうなんだ そういうものよ ツルバラって子は、ちょっとそういうトコあるのよ ふうん…でも ぼくは、ツルバラさんに こんにちはも さようならも いえなかった。
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