恋に落ちた瞬間

2/3
前へ
/30ページ
次へ
幸坂(こうさか) 拓己(たくみ)』 既にリサーチ済みの梨絵から彼の名前を聞き、1つ年上の2年生だということも分かった。 その部活見学の時には、3年生と2年生の一部の部員が、二手に分かれて練習試合をしていた。 「拓己! ナイスシュート!」 ベンチから掛けられる親しげな透明感のある声。 ギャラリーは一斉にその女子に視線を向ける。どうやら男子部のマネージャーらしい。 短めのボブカットに切り揃えられた髪から少しだけ覗く首筋と、口元に添えられた白い指先が綺麗な人だった。 部のエースと、アイドル的存在の女子マネジャーのカップル。 よくある話だ。 勝手な想像かも知れないが、何となく空気で感じた。 二人の間には他の人が立ち入れない何かがあるのかも知れないと……。 一目惚れ? 梨絵が言うように、ただカッコ良かったから? …… 自分はそんな単純な理由で、恋なんかしない。 しかしその日、練習試合が終わり、彼が体育館を出て行くまで、美織はその姿を目で追っていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加