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『幸坂 拓己』
既にリサーチ済みの梨絵から彼の名前を聞き、1つ年上の2年生だということも分かった。
その部活見学の時には、3年生と2年生の一部の部員が、二手に分かれて練習試合をしていた。
「拓己! ナイスシュート!」
ベンチから掛けられる親しげな透明感のある声。
ギャラリーは一斉にその女子に視線を向ける。どうやら男子部のマネージャーらしい。
短めのボブカットに切り揃えられた髪から少しだけ覗く首筋と、口元に添えられた白い指先が綺麗な人だった。
部のエースと、アイドル的存在の女子マネジャーのカップル。
よくある話だ。
勝手な想像かも知れないが、何となく空気で感じた。
二人の間には他の人が立ち入れない何かがあるのかも知れないと……。
一目惚れ?
梨絵が言うように、ただカッコ良かったから? ……
自分はそんな単純な理由で、恋なんかしない。
しかしその日、練習試合が終わり、彼が体育館を出て行くまで、美織はその姿を目で追っていた。
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