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「美織のタイプだったか〜。
ま、私は他の部をもっといろいろ見学して、私好みのイケメン探すわ」
女子バスケット部の入部を決めた美織に、梨絵はケラケラ笑いながらそう言った。
「梨絵、それ、部活見学じゃ……」
「アンタに言われたくな〜い」
被せ気味に言うと、梨絵は美織の脇腹をくすぐる。
「いや、ホントに、バスケ続けたいだけだから! 別にあの人が居るからとかそういうんじゃ……」
「はいは〜い!」
そう茶化していた梨絵だったが……
「ま、私もバスケは好きだし、別の目的もなくなったし、美織のこれからを見届けようと思ってさ〜」
結局、梨絵のお眼鏡にかなう男子は他の部にはいなかったらしく、彼女もまた女子バスケット部に入部を決めた。
入部して暫くして、彼とあの女子マネージャーが付き合っているのだと聞いた。
あの時感じた勝手な憶測は、当たっていたのだ。
…別にそんなに本気な訳じゃない。
中学から高校に上がり、“ 先輩 ” というものがとても大人びて見えた。
その中で、ちょっと最初の印象が良かったから、憧れてしまっただけ……
案外、ちょっと性格の悪いとこや、ダサいとこなんかを知ったりしたら、簡単に冷めてしまう程度のものなのかも……。
美織は苦笑いをしながら短い溜め息をついた。
それでも厳しい練習の合間合間に、思わず目が吸い寄せられてしまうのは彼の姿だった。
ボールを操りながら走る、投げる、跳ぶ。気迫すら感じる真剣な姿。
そして一転、緊張感が解け、タオルで汗を拭いながら、仲間と談笑している、そんな彼の姿に、いつも心を奪われていた。
彼と言葉を交わした事もない。
部活の時の彼しか知らない。
これが恋なのか憧れなのか、分からない。
でも、こうやって見ているだけで幸せなんだから、それでいい。
叶わないからと言って、自分の気持ちを否定することなんかない。
完全な片想いだったとしても、それだって “ 恋 ” なんだから……。
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