日記帳を開けば

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日記帳を開けば

「えっと、今日は4月12日か。  何年の4月12日にしようかな。」  波里との突然の別れから五年が経ち、大学生になっていた毬亜は、登校前に、波里の遺した日記帳を見ていた。 「小学生の波里に会ってみようかな。  よし、六年生はどうだ?」  毬亜は日記のページを開いた。 『マンガとかアニメでは、卒業式にも入学式にも桜が咲いているのは、どうして?』 「確かに! 桜ってそんなに長く咲かないよね!」  あまりに波里らしい指摘がツボって、毬亜は吹き出した。五年前のおさげ髪とは違う、大人っぽいショートヘアがさらっと揺れた。 「なるほど、なるほど。  毬亜がちゃんと調べてあげますよ、波里。  安心してね。」  毬亜は窓の中から空にウインクをした。  あの日からもずっと、二人で歩く道は続いていた。  日記帳のクエスチョンは、いつか全て解決するだろう。その頃にはきっと、自分の答えも出ているはずだ。  波里を失って、どこへ向かえばいいのか。  ぼんやりするたびに、日記帳を開いてきた。  そして、お題の答え探しに没頭してきた。  そうやって、生きてきた。  最近ようやく、死にたいと思わなくなってきた。 「サクラ、サクラ……」  まだ花の残っている桜並木を歌いながら歩いて、波里は学校に向かった。今はまだ、空からの光に波里の見守る瞳を感じていた。 「サクラも波里もー……」  見上げた桜はやさしい色で、毬亜は思わず微笑み返していた。足首が少しだけ、昔のように跳ねた。
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