君にふたたび出会うまで

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 屋上に行ったら、すでに先客がいた。見覚えのある後ろ姿に見えて少しずつ近づくと、近寄る前に彼が振りむいた。  一瞬、息がとまりそうになる。  彼は少しだけ目を腫らしていて、泣いてるように見えたから。まるで泣くのをこらえているような。  その瞳を見た瞬間、かける言葉をうしなってその場に立ちつくした。わたしも泣きたかったんだ、とあとになって気づく。ひとりで泣きたくて、ここに来たんだと。  彼はわたしを見ると、不意をつかれたような顔をして、でもその直後には何事もなかったかのように、 「君もサボり?」と訊いた。  その瞬間、チャイムが鳴り響いた。  始業を知らせる音。自動的にわたしはうなずいた。最初に抱いた既視感はもう忘れていた。同い年だろう、となんとなく推測する。清潔そうな黒髪。泣いてたの? なんてもちろん訊けなかった。泣きたい衝動はきれいになくなっていて、彼がいたからだと気づいていた。    フェンスにもたれていた彼の隣に立って、校庭とその先に広がる街を見降ろした。  世界はちっぽけで広大で、ときどきわたしの手に負えない。彼も同じことを考えているんじゃないか。まったく同じじゃなくても、同じようなことを。  教室のなかでは無意味なことでも意味があるように言わなければいけない。だから沈黙を保つのはそこにいないのと同じだった。クラスの女子のテンションはいつも異様に高いから、違う星の生き物と接してるような気がしてくる。きっと向こう側でもそう思われているだろう。 「いい天気だね」  手持ち無沙汰に彼が言って、あまりになんでもない普通の口調だったから、そのまま空気に溶けそうになる。 「そうだね」と応えた瞬間、新鮮な空気が肺に入って、とても久しぶりに人と話した、と思った。
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