君にふたたび出会うまで

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「なんでいつも屋上にいるの?」  自分のことは棚にあげて、わたしはそう訊いてみる。彼に興味をもったのは、きっと同じ人種だからだ。同じ惑星に住んでいて、数少ない言葉が通じる人間だと思ったから。  その穿った見方は心外かもしれないけれど。 「後悔してるから」  そうつぶやいたときだけ、彼は泣きそうな顔をした。言葉を発するのをためらわせる表情。   わたしは彼を知りたいと思っている。その欲求に初めて気がついて、手を伸ばすように重ねて訊いていた。 「何を?」 「好きな人を死なせてしまったのを」  それは悪い冗談か笑えないギャグかと思ったけど、どちらでもなさそうだった。  手を伸ばしたことを悔いるようにわたしは無言になる。これ以上訊いたら彼の傷に無遠慮に触れそうで、そして嫌われそうで、そのどちらもわたしは恐れていた。 「そうなんだ……」  せめて同調したくて小さくうなずいてみる。  進むことも戻ることもできない。停滞って言葉が浮かぶ。それは彼にピッタリな言葉に思えた。そしてわたしにも。  ゆがんだ時空のはざま、どこにもたどり着けない終着点に彼とわたしはかろうじて立っている。 「この学校の人?」  だから彼はここにいるんじゃないか。  そんな気がしてもう一度尋ねていた。 「よく分かったね」  同じ学校。彼の好きな人。  今もずっと忘れられない人。  濃縮した悲しみが一気に間近にせまる。  きのうのことを不意に思いだす。泣いていたように見えた横顔も。思いつめたような眼差しも。彼がここにいる理由が明らかになるようで、ためらいながら恐れながら、訊かずにはいられない。 「もしかして、死のうとしてるの?」  強い風が吹きつけて前が見えなくなる。  透きとおっていく瞳。驚いたような彼の顔。よく分かったね、と彼は言わなかった。  その沈黙が肯定の印だった。  そっか、だから彼はここにいて、どこにも行けないままなんだ。そう理解したわたしと、理解しようとしないわたしが激しく拮抗して、思わず彼の右手を握りしめた。そうしないと消えちゃうような気がして。  彼はもう一度わたしを見返して、雪が溶けるような優しい笑顔になった。口元に刻まれたほほ笑みから目が離せなくなる。  いいんだよ、とその目が語っていた。同情も共感も慰めも必要としていない、やわらかな瞳だった。よくない、と言えないわたしは不甲斐なくて悔しくて仕方なかった。
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