VSバトルは終わらない

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 私は二人のやり取りを見ながら牛乳瓶の蓋を開け、ごくごくと飲み干した。ユウサは床に顔を近付けて、「わぁぁ」と叫んでいる。彼に舞い降りた「敗北」という事実に嘆いているのかなぁ。私視点からは教室の床を舐めているようにしか認識出来ないけどね。  一方のコウイチはトングを掴み、銀に光り輝く食缶から金色の秘宝……ミニサイズのプレーンオムレツを取り出す。そしてそれを自身の皿に移した。彼は延々と「美しい、実に美しい」とかブツブツ呟いている。先生、私達の学校に不審者が侵入してますよ。  まず……プレーンオムレツが一つ余ったのでおかわりジャンケンをしましょう、って先生が言ったのに。二人揃って「ジャンケン!? そんなの俺(自分)達の勝負には物足りねぇ」とか意味不明なことを発言し始める時点でオカシイでしょう。  「(おとこ)なら運ゲーに頼らず正々堂々バトルしようじゃねえか!」だってさ。いや、あみだくじ(・・・・・)も運ゲーだからね?  小学六年生の給食(あみだくじ中)。それがこんなにカオスになるとは誰が予測出来たであろうか。あの、お二人さーん、「カッコイイこと言ったぜ……!」的な雰囲気になっているけど、一旦クラスメイトの表情見たらいかがでしょうか?  ……さてと。ちなみにね、私は二人の行く末を全て知っていた。だって、あのあみだくじは私が作ったから。ホワイトボードにマジックペンで線引いて、当たりとハズレの文字を付箋で隠しただけではあるけど。  ユウサがAの道を選ぶその時から、運命の歯車は完成していたのよ。ふふ、言うならば私が黒幕の位置。ライバルと戦った後はラスボスとの戦闘はいかがかな?  私はガタリと椅子を下げ、立ち上がる。プレーンオムレツをひたすら見つめていたコウイチも、「くそ、メガネ野郎……!」と怨念の目で勝者を睨むユウサ(尚、彼もメガネ掛けている)も、私の方を凝視する。嗚呼、その唖然とした顔。非常に滑稽ね。  阿呆らしいけど、面白そうで、厨二病じみた勝負。私も乗った! 「お二人さん……。次は一つ余った茶色の宝物(ブラウントレジャー)、クロワッサンを賭けてバトルしない?」
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