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「進路相談かぁ。もうポラリスちゃんもそんな年齢なんだね」
「そうそう。それで最近相談されたんだけど、うちの子バカだから声優になりたいとか言い出して。もうちょっと現実見ろって感じじゃない?」
みぃちゃんは気怠そうに溜め息をついて、ハイボールをグビグビとあおった。ガヤガヤとした大衆居酒屋に来るのは何年ぶりだろう? ここの鶏からが美味しいからってみぃちゃんに予約してもらったけど、最近は接待で静かな店ばかり行ってたから、なんだか学生時代に戻った気分。
「でも、やりたいことがあるのはいいことだよ。それに向けて努力することだって出来るわけだし」
「そんなんじゃなくてほぼ思いつきだから。知ってる? 最近若い子達の間で流行ってる『ハピキャピ!』っていうアニメ。あれに後藤ハンナ、ポラリスが好きなアイドル声優が出てて、ああいう風になりたいっていうのよ。もうバカバカしくて! ちゃんと受験していい大学行けって言ってるのに、声優学校に行くんだって譲らなくて、もう毎日喧嘩ばっかよ。嫌んなっちゃう」
「懐かしいな。みぃちゃんだって高校生の時、絶対に歌手になるんだって親と喧嘩してたよね。私も養成所探しに付き合わされた」
「蛙の子は蛙って? だからこそ言ってるの。私はそれで意地張って大学受験しなかったわけじゃん? そのせいでアットホームな雰囲気だけが売りの中小企業の事務員なんていうクソ雑魚人生送ることになったわけで。ポラリスにはそういう風になってほしくないの」
親の心子知らずっていうのはいつの時代もあるものなのかな。よくわからないけど。
みぃちゃんは小中学校の同級生で、かれこれ三十年の付き合いになる。勉強が好きだった私と勉強以外のことが好きだったみぃちゃんは何もかもが真逆だったけど、家が近くて毎朝一緒に登校してたから大の仲良しだった。それこそ休み時間や放課後まで一緒にいた気がする。今思えばそれだけ長い時間よく話が続いたなってくらい、ずーっとみぃちゃんとお喋りしてた。高校から学校が変わって、大学進学して、就職してってするうちに私もすっかり歳をとった気がするけど、みぃちゃんと話してると昔に戻ったみたいな気分になる。やっぱり幼馴染って特別なんだろうな。
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