毒婦アストリッドの逃走

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 私は薄暗い牢の、明かり取りをというよりも、空気孔にしか見えぬものから入ってくる薄明かりを見つめた。  そろそろ白夜だ。  戦争中も、白夜祭りを陣営の中でささやかに行ってきた。  聖女の祝福の、祈りの舞だ。  オリヴェルは私の踊りに合わせてリュートを弾いた。  戦況が落ち着いた年には、カーリンが調子っ外れの歌を歌い、オリヴェルが変な顔をするのを合図に、将兵ががなりたてるのだ。  そのカーリンも、私の裁判のために帰ってくると伝言があったのに、帰ってこなかった。 「囚人番号、」  瞑想していると牢番の声が聞こえてくる。夕飯を配っているのだ。  今夜もまた狂女の叫び声を聞きながら眠るのだろう。  何日前になるだろうか。酔っ払った女が目を覚ませと牢屋に入れられたのはいいけれど、私の牢獄の入り口にドンとぶつかってきた。 「最高神のご加護を」  口癖でつぶやいた。  最高神が一番初めに救うべきは、こういう人たちだろうに。  私は最高神への恨みは言わない。  最高神の加護などないのだから。  恨み言も感謝も述べずに、ボソボソとしたパンと吐瀉物のようなシチューを詰め込んだ。  私が食べなかったらきっと牢番が罰せられるだろうから。  オリヴェル。  もうすぐ私もそばに行きます。
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