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複数の馬の蹄の音と、体が揺れるので目が覚めた。
処刑場に行くのだろうか。
だが、私の全身は大きなカゴに入っていて、嗅ぎ慣れた藁の匂いがする。
私は藁の中に入っていた。
藁は結構な重みになる。
だが、藁の中に大きなカゴが入れてあって、私はその中に入っているので重くはない。
もう、処刑されたのかと、光が見える方向にぞもぞとかき分けてみると、外が見えた。
今の季節は麦秋。つまり一番日の長い時期だ。
藁はいろんなところで使う。牛舎に厩舎、豚舎に鶏舎。そして塩田。
藁を積んだ荷馬車は国中の農村地帯から都市部までどこへでも行くことができる。
街道にいるのだろうが、どこからどこへ向かうのかがわからない。
太陽の方向を見れば方角もわかるだろうけど、曇りでよくわからない。
だが私がもそもそとしているのが誰かにわかったのだろうか。
野太い男の声がした。
「閣下!」
少し遠くにあった馬が近づいてくる。
「テス」
男にしては高く、女にしてはかなり低い声に覚えがある。
まさか、嘘つきファルクマン!?
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