毒婦アストリッドの逃走

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「毒婦アストリッド・ショーグレン。聖女の名を騙ったかどで、処刑する」  私はこのエークルンド王国の聖女だったはずなのに。  二十八で火あぶりの刑を宣告され、明日執行される。  もう涙も流れない。  何もかも、前王ラスムス十五世オリヴェルが射抜かれたときに終わった。  オリヴェルが倒れたと聞いたヘルシンボリ公爵ファルクマン将軍は、一気に兵を進め、ノルム王国の王宮を制圧し、十年間にわたるノルム侵略戦争には勝った。十年前、我が国はノルム王国に侵略されたが、今ノルム王国とエークルンド王国は連合王国になり、同じ少王アドルフを頂く。  なのに、肝心のオリヴェルはいない。  王妃、いや王太妃ブリュンヒルデは私を責めた。  通常、歴代国王「ラスムス」が亡くなったときに聖女は、引退するものだ。  そして最高神の神託を受けた新たな聖女が選ばれ、新国王に戴冠して、新しい時代が幕開ける。  だが、ラスムス十五世オリヴェルの聖女アストリッドは、王太妃ブリュンヒルデによって弾劾された。  偽聖女。  毒婦。  そもそも、王を守ることができなかったのだから。  私は罪を認めた。 「私は聖女ではない。最高神の神託などなかった。ただの女」  王を愛したただの女。
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