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朝の駅で彼は電車が発車するのを待っていた。車窓から外を眺めた。黄色い帽子をかぶった子供たちが、大急ぎでやってくるのが見えた。ドアが閉じた。電車が動き出した。
彼は先頭車両へ歩き出した。次第に足早になった。
「電車を止めろ!」彼は叫んだ。
乗客たちは驚いた。
「電車を止めろ!」彼は叫んだ。
乗客たちは顔を見合わせた。車掌が走ってきた。
「電車を止めろ!」彼は叫んだ。
「お客さん、電車は止められませんよ!」
車掌は彼を羽交い締めにした。彼は車掌を引きずりながら前進した。
「電車を止めろ!」
「お兄さん、無茶を言うなよ」おじいさんがいった。「無茶をいうなって」
車掌は彼に引きずられながら叫んだ。
「電車は止められません!」
「電車を止めろ!」
部活動のグループの男の子たちが、彼のまねをしてケタケタ笑った。
「電車を止めろ!」彼は叫んだ。「電車を止めろ!」
無茶なものか。
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