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いつもの店で
「 それじゃあ橙山くん、接待の件は君に任せるからよろしく。
取引先の杉峰社長は普通のレストランや料亭なんかは行き慣れてるから、もっとこう、サプライズ感がある所を頼むよ。
君、グルメで有名なんだろ。」
なーんて、言われたのよ。クソバカハゲ部長に。
知らないわよ、私そんなとこ。安月給のOLなんだし。
週末の夜、橙山真理子はレストランバー『intersezione』でブルスケッタをつまみにワインを楽みながら、料理人の藍川斗真に愚痴っていた。
ここは真理子が勤めるオフィスから少し離れた路地裏にある馴染みの小さな店である。
正直レストランバーというよりは、夜遅くまで営業している洋食屋といった感じだ。
見た目がそっくりな二人のデブゲイカップルの料理人が営んでいる。
ちなみに屋号の『intersezione』はなんちゃら語で交差点という意味で二人の出会いに由来するらしい。
「 で、真理子ちゃん、どこかいいお店は見つかりそうなの?」
斗真は意外と優しくので、おそらく本気で心配してくれているであろう。
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