いつもの店で

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「 それがまだ全然。   それなりの店だったら何軒か知ってるんだけど、それなり程度なのよね。   サプライズ感って言われたけど、接待な訳だから文字通りのパーティー的なサプライズではダメなのよ。    そういう意味ではなくて、  ハッと息を飲むような、こんな素敵な店がまだあったんだ!  的な粋で憎たらしいサプライズじゃないとね。」 「 じゃあ、うちでどう?」  もう一人の料理人、藍川薫が全然本気じゃない軽い口調で言った。  ちなみに、二人の名字が一緒なのはたまたまで、特に籍を入れている訳ではないそうだ。  見た目の雰囲気が似てることも手伝い、おそらく客のほとんどは二人のことを兄弟だと思っているのだろう。  もちろんしっかり者でちょっと凛々しい斗真が兄で、愛嬌たっぷりでかわいらしい薫が弟だ。 「 ダメよ。『intersezione』は接待的な雰囲気じゃないでしょ。それにここは私の心のオアシスなんだから、会社関係の人は近寄らせたくないのよ。」 「 えー、残念。   取引先の社長さんとか、仕事モードの真理子ちゃんとか見たかったのになぁ。」  薫はいつも陽気で楽しそうだ。 「 ちなみに、杉峰社長はなかなか色気のある良い男なのよぉ。」 「 だから真理子ちゃん、張り切ってるんだ。」 「 ねぇ、あんた達、料理人繋がりでどこかいい店知らない?   静かで、雰囲気があって、安らぎや癒しだけではなくてちょっと緊張感があって料理が美味しくて、ついでに私が綺麗に見える店なんてないかしら?」
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