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 私はなんとなく窓の向こうを流れていく景色を見ていた。  高校生の頃に友達とよく食べに行っていたドーナツショップがなくなっていた。見たこともないカフェができていたし、あれ? ここは田んぼと畑しかなかったはずなのにという場所には新しそうな戸建てが並んでいた。  それでも、今も残っているコンビニがあったり、目印代わりにしていた赤い屋根のおウチがあったりもした。 「次は、『三田(みた)』、『三田』に停まります」  そんなアナウンスで我に返る。  都合のいいことに自分が降りる停留所で意識が戻る。昔もバスの中で眠っていても、三田が近づくと目が覚めることが多かった。  降車ボタンを押してから間もなくしてバスは停まった。  私だけが降りるらしく、ほかに誰も立ち上がる様子はなかった。私は一人でバスを降りた。バス停は錆びていて「三田」の文字すらはっきりと読むことができない。これは昔からそうだった。通りの向こうにコンビニが見えた。  あんなコンビニはなかったな。夜中に歩いてこれる場所にコンビニ、あの頃欲しかったなぁ、なんて思いながら歩き出そうとしたとき、私はあることに気が付いた。  あれ?  私の家、どこにあるんだっけ?  頭の中にモヤがかかったかのように、ここから先、どこに行けばいいのかがわからなかった。  なんと私は、家までの道を思い出すことができなくなっていた。
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