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「なに言ってるの、結衣夏? ふざけてる?」  奈緒の質問はもっともだった。逆に同じ質問をされたならば、私もそう思うかもしれない。 「いや、あのね、奈緒。いまは奈緒しか頼れる人いないんだ。お願いだから、真剣に聞いてほしい」 「えぇ……」  まだ眉間に皺を寄せたままの奈緒に私は事情を説明した。  駅からバスにのって「三田」で降りたはいいけど実家の場所がわからないこと、スマホをなくしちゃって両親にも連絡を取ることができないこと。 「うーん……百歩譲ってそんなことがあるとして……」  まだ疑っているかのような目で奈緒は腕組みをする。 「結衣夏ん家……。ごめん、ちゃんと覚えていないんだけど……そっちの市営団地のほうだっけ?」 「市営団地……?」 「そもそも……自分の住所は覚えてる?」 「富山県中新川郡立山町……あれ? あれ?」 「あー……ダメそうだね……わかった、これも乗りかかった船だから、つきあうよ。車で来てるからさ、乗って」  奈緒の指さす方向にはネイビーのコンパクトカーがあった。
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