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母が死に父が死んだ
そんなに大きくはない村の半分の人が死んだ
13年生きてきて、こんなに悲惨な光景を見たことがない
家族を思い泣いている
友を思い泣いている
自分の死を恐れている
誰も私のことなんて気にしていない
13年生きてきて、こんなに安心して周りの人達を見たことがない
ようやく落ち着いてきた流行り病の終息は、少しずつ周りに目を向け始めた。
思い出したかのように不愉快な顔と共に不快なものを送ってくる。
これから力を合わせて村を再建していくと、余力を希望に変えている。
……村を出よう
見たこともない瞳の色で生まれてしまった為に、私を見た人達は、未知への恐怖や、これから起こるかもしれない不吉な未来を感じ、畏れ、怒り、とにかく悪いものしか与えないらしい。
それまで仲良く過ごしてきた両親も、謂れのない中傷、誹謗、理不尽な差別…
私が生まれて世界は一変した。
それでも、他の人達と変わらず真面目に働き、他の人達と変わらず娘に愛情を注ぎ、私の存在意義を示してくれた。
けれども急に勢いを振るって流行り出した病は、予想や理解の範疇を超えて、悲しみと怒りの矛先は私の存在へと絞られた。
あまり効果はないようだったけど、薬を貰うことは出来なかったし、少なくなってきた食料を分け与えて貰うことも出来なかった。
それでも、私の存在なんか気にしない位にひどい状況の時は良かった。
みんなが生きる希望を取り戻したのなら、またあの日々が始まる…
そういう環境で育ったせいなのか、人の強い感情を感じやすくなってしまった。心地よいものならいい。でも、この村では不快なものしか感じない。体調が悪くなるくらいの。
何処へ行っても同じなのかもしれない
1人で生きていく術なんて知らない
でも、どうせここでは生きていけない
長目に伸ばした前髪で目元を隠し、うつむき加減で歩く。光の強さや角度によって、私の瞳の色は少し変わるらしく、少し離れた距離で短時間だと気付かれないこともある。家に残された、僅かなお金になりそうな物を手に、知らない街を歩く。
とりあえず食べる物を手に入れなければ。その後何処か働ける場所を探して…
こんな瞳の色をした者を雇ってくれる人などいるのだろうか。ましてまだ大人になりきれていない、特別な才能もない私を…
知らない土地で、極力人との距離を取って関わらないようにしながら、ようやく今日生き繋いでいける分の食糧を手にした時には、もう一歩も歩きたくなくなっていた。
自分に向けられたものではなくても、沢山の強い感情に触れたことで、頭痛はひどくなり、吐き気までしてきた。
何処か人が来ない所…
少し離れた場所に、海が見えるちょっとした高台のようなものを見付ける。
ほっとして、なんとか力を振り絞って歩き出す。
ようやく辿り着いて、座ろうとした瞬間…
ぐらり…
急に目が回る。
危ない!と思いながら、その不思議な感覚に抗えず身を任せ、真っ暗になった。
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