赤の見る世界 赤のない世界

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「…!…!」 ………? あれ?何だっけ?今寝てたんだっけ? 「…み!……?!」 ん?なんか聞こえる 夢?なんかあったかい感情に包みこまれてる 男の人の声…お父さんかな… 「…み!きみ!大丈夫?!」 え? お父さんの声じゃない …誰? ゆっくり目を開けてみると、心配そうな男の人の顔 なんか必死になって声をかけている ああ…そうだ。私倒れたんだ。 だからこの人こんなに心配して… !? ボーッとする頭で考え、ある事に気付く。 こんなに近くで眼を見られてる! 驚いて起き上がり俯いて距離を取る。 びっくりした こんなに間近で家族以外に見られたのはかなり久しぶりだ 「急にそんな動いて大丈夫?やっぱりまだ具合悪い?」 完全に眼を見た筈なのに、心配そうな感情が伝わってくる。 もしかしたら世界では、案外こんな眼をした人がいるのかな? …違う。それはもう随分昔に否定された。 あんな小さな村でも数年に1回位旅人が寄ることがある。小さな期待をして近くに寄ってみたけど、やっぱり凄く驚いてた。 怖かった 色んな場所を見てきた旅人すら驚くほどに、珍しく不吉な物なのかと思った でも、他の旅人なら… 次は少し距離を取って目を合わせてみた。やっぱり驚いた表情をしていた。 もう旅人に近づくのはやめた。 だから、きっとこの人は凄く優しい人で、今は心配しているからあまり気になってないだけ。だって凄くあったかいものが、ずっと感じられるもの。 でも私が無事であることを確認したら、きっとすぐに離れて行く。優しいから嫌な事は言わないかもしれない。 でも、このあったかいものが消えてしまうのは堪えられない。 今のうちに離れよう 勢いよく立ち上がりお礼だけ言って立ち去ろうと、 「あの、ありがとうございました」 そう言って頭を下げた途端また景色が回った 「危ない!」 そう言って体を支えてくれる。 駄目だ 早くこのあったかいものから離れないと そう思って動こうとすると、 「やっぱりまだあまり動かない方がいいと思うよ。あそこの木の陰で少し休もう」 そう言って、背中から肩に手を添えて歩き出そうとする。 「あの、私もう大丈夫ですから」 視線を合わせないように、顔だけ少し向けて言うと、 「そっか。でも、俺にはまだ顔色悪く見えるよ。あの木の下までは行こう?あまり日差しの強い所に居ない方がいい。何か急ぎの用事とかある?」 優しい声 離れたくなくなってしまう 「…特に…用事はありません…」 そう言って、大人しく歩き出す。 木の下に着くと、優しく座らせてくれた。 木陰に入ると、少し気分が楽になった。 「君、家はこの近く?もし嫌じゃなければ送ってくよ?嫌だったら、その辺の人…には頼めないか。あ、家を教えてくれたら、家族の人呼んでくる…って、知らない人に家を教えるのも嫌だよね?え~と…この近くに知り合いとか居る?言ってくれれば、その人呼んで来るけど」 隣に座ったその人は、自問自答しながら、必死になって考えてくれている。 「…家は…この街ではありません。…両親は亡くなったので家族は……居ません。…この街は今日来たばかりなので、知り合いも居ません。」 改めて口にして、本当に独りなのだと思い知らされる。けれども、村に居ても同じこと。あの目が、感情がないだけ、よっぽどいい。 そう考えていると、 「そっか。じゃあ君も独りなんだね」 少し寂しそうな笑顔でそう言ってきた。 私とさほど変わらなそうな歳に見えたのにと、思わず視線を上げて見てしまった。 …どうして どうして、この人は視線を逸らさないのだろう? どうして、この人は嫌な感情を一切送ってこないのだろう? 「?どうかした?」 思わず視線を合わせたままにしていると、不思議そうに、少し心配そうに聞いてくる。 「………」 怖い 俯いて視線を逸らせる でも知りたい 「あ、なんか飲み物でも買って来ようか?食べ物は…まだ無理かな?」 まるで私の瞳が、他の人達と何の変わりもないかのように話し出す。 「…どうして…」 「?え?ごめん、よく聞こえなかった。何?」 顔を上げて両手を握り締める 「…どうして…あなたは、私の瞳を見ても平気なの?」 少し驚いた顔をしている。 やっぱり答えを聞かずに逃げだしたくなる。 でも…もしかしたら… 「ごめん、もしかして君の瞳の色は赤いのかな?」 本当に申し訳なさそうに、思ってもみない答えが返ってきた。
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