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もしかして赤いのかな??
どういうことだろう?
理解が出来ず黙っていると、
「実は俺、赤い色が見えないんだ。正確に言うと、赤い色は茶色に見えている。赤に近い色もなんだけど。だから、君の瞳の本当の色を見ることが出来ないんだ」
頭を搔きながら、申し訳なさそうに、寂しそうに笑いながら言う。
赤い色が見えない?
今この人には、私の瞳の色が茶色に見えているってこと?
そんな人…居るのかな?
驚いて黙っていると、
「あ、驚いたよね?ごめんね?俺も気付いた時はだいぶびっくりしたからさ!でも、俺の見える世界でも、その青?銀色?の髪によく似合ってるよ」
そう言って幸せそうに笑ってくれる。
もしかして神様っているのかな
その場限りの嘘でも同情でもなく、私の瞳を見て不快に思わない人と出会わせてくれたのかな
取り出したい程おぞましい赤い瞳が、茶色にしか見えない人と出会わせてくれたのかな
「…っ」
感情が溢れ出す
「えっ?!ごめん!何か傷つけるような事言った?あ、そっか、髪の色も全然違った?」
あったかい
ずっとずっとあったかい
この人の傍に居たい
「ありがとう!」
思ってる事は沢山ある
言いたい事も沢山ある
でも1番伝えたい事だけを伝える
「えっ?ああ…うん…。よくわかんないけど、傷つけた訳じゃないなら良かったよ」
そう言って笑ってくれる。
ああ、家族以外でこんなにも安心した気持ちでいられる人に出会えるなんて思いもしなかった。
村を出て良かった。
私と同じ色の瞳を持つ人が居るのかはわからない。でも、私も赤い色が見えない人が居るということを知らなかった。
世界には色んな人が居るんだ。
「だいぶ気分良くなった?今日この街に来たってことは、もしかしてこれから宿とか探すの?」
笑顔になった私を見て聞いてくれる。
何も決まってない、何もわからないと言ったら、この人はもう少し一緒に居てくれるだろうか?
「まだ何も決めてなくて…。とりあえず食べる物だけ買って休もうとしたら倒れたみたいで…」
事実、そうなんだけど…
「そっか。俺もこの街の人間じゃないんだけど、君よりは詳しいよ。良かったら宿とか色々案内しようか?」
やっぱりこの人は優しい
「いいんですか?あの、私村から出るのも初めてで、ほんとに何もわからなくて、もしそうしていただけるのなら、すごく助かります」
そう言うと、とっても嬉しそうに、
「ほんと?!よし!じゃあ決まり!知っておいた方がいい事とか、場所とか、色々あるからね」
さっきまでとは違った、初めての感情が伝わってくる。
あったかいだけじゃない、胸が高鳴るような、幸せが詰まっているような感情。
この人は、私に色々教えたら去ってしまうのだろうか?
「…あの…あなたはどの位この街に居る予定なのですか?」
「う~ん…はっきりとは決めてないんだ。君は?何処かに行こうとしてるの?」
そう聞かれて少し考える。
仕事があればこの街で暮らし、なければ別の街に行くしかない。そう考えていたけれど…
「…何も…とりあえず村を出ることしか考えてなかったから…」
こう言ったら、この人は私の傍に少しは長く居てくれるだろうか…
「そっか。じゃあさ、とりあえず目的地とか、何かしたい事が見付かるまで、俺と一緒に色んな所を旅するってのはどう?」
旅?
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