赤の見る世界 赤のない世界

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期待していた通り、私を独りにはしないと言ってくれた。 けれども、旅? 村から出たこともなかった私が、旅をして歩く? そんな生き方考えたこともなかった。 「あなたは、旅人なのですか?」 旅人…あまり、いい思い出のある言葉じゃない… 「ん~まあ、そうなってるね。体力とちょっとした戦う力はあるからさ、色んな災害とか、人手がいるような事態が起きてるような所に行って、出来る事をして食べてるんだ。ま、何もない間は何でも屋みたいな事をしてお金を貯めてね。」 そう言って一呼吸置いて、 「俺の居た村さ、俺が何日か隣街に行ってる間に、人が住めない状態になってたんだ…。生き残った人達によると、見たこともない、でっかい竜巻にやられたんだって言ってた。そんなのどうしようもないよね。たった数分で、村がなくなっちゃったんだ。でも、他の村や街でも、色んな形で困ってる人達がいる。そこで出来ることしながら、情報集めていったら、何か分かることもあるかもしれないなと思ってさ」 そう言って空を見上げる。 ああ、この人は、私があんなにも手放したかった故郷を、知らない間に消されてしまっていたんだ。 何故世界は上手く回ってくれないんだろう? でも、もし私とこの人の状況が逆だったら、私は今、この人に出会うことは出来なかったかもしれない… もしかしたら世界は、遠回りしながら上手く回っているのかな? 私も幸せに暮らせる日に向かって近づいているのかな? 「うん。私も色んな場所に行ってみたい」 あなたと一緒に 「ほんとに?!うわ!言ってみるもんだな!絶対断られると思ったよ。あ!でも、こんな風に初めて会ったよく知らない人を、すぐに信用したり付いて行っちゃ駄目だよ。悪い事とか危ない事考えてる奴もいっぱい居るからって、俺が言うのも変だけど」 そう言って笑っている。 「うん。分かった」 あなた以外、こんなあったかいものをくれないから、付いて行こうなんて思わない 「じゃあ今日から旅の友だね。よろしく!」 「うん。よろしく!」 握手をしながら、 「あ!そう言えば、お互いまだ名前も知らなかったよね」 そう言われて、そうだったと気付く。 「私はヒナ。よろしくね」
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