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第一印象なんて酷いもんである。
「なあおい、次の講義ダイヘン頼むよ」
寝てるとこをバシバシ肩叩かれて、はじめましての会話がそれである。ダイヘンは『代返』。次は出席カードで受講確認を取る講義、ようするに二つ書いて出しとけと言っているのだろう。
「…………」
顔をあげてみればきんぱつにピアス、クレオパトラみたいなアイライン。分かり易いヤンキーが馬鹿にしたような顔でオレを見下ろしていた。
「頼むって。バイトあんだよ」
嘘だ。向こうで同じような女三人がこっちみて笑ってる。
「26番、近藤。カタカナでいいからさ、なっ?」
何度もいうが初対面。根暗そうなオレなら断らないとでも思ったのだろう。
「キツネみてぇな顔しやがって、いっちょ前に人間様の言葉喋ってんじゃねぇぞボケ」
だが考えてもみて欲しい。ここは歯科大学なのだ。
この教室で学ぶに辺り、学科、小論、面接とそこそこ辛い受験を乗り越える程度の知能を、みんな持っているはずなのだ。
断る?断るとも。
ヤンキーだったらどうした。ここで騒ぎを起こすなんて、教員に目を付けられるような事などわざわざするはずない。
面倒くさい人間だと思わせたら勝ちである、もう二度と寄ってこなぐぶぇっ…
「書いとけよ、なぁおい」
グー?グーでいったか?今グーで殴ったか?
暗い目で念を押し、キツネ女はドシドシと去っていった。
で、結局書いたのかって?書いたよ。
『26番テコンドー。医療倫理とかクソダルいんでネリチャギいってきま〜すアチョー』
ざまあみやがれ。
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